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ハンセン病療養所⑤ 偏見・差別克服へ「歴史学ぶ」

鈴木さんは患者が収容された回春寮を僧侶に説明する(愛生園) 鈴木さんは患者が収容された回春寮を僧侶に説明する(愛生園)

この2月下旬、国立療養所長島愛生園(岡山県瀬戸内市)で入所者と僧侶らの定例交流会が開かれた。神戸の中杉隆法副住職も参加し、園内の寺院「真宗会館」に24人が集まった。勤行の後、初めて療養所を訪れたという地元の若い真宗大谷派僧侶が法話をした。ハンセン病を扱った映画「あん」の原作者が自らの無知を恥じたという話題から「私も勉強はしてきたが来るのが怖くて足を運べなかった。隔離は自分の生まれる前の出来事だといっても、その土台にある優生思想が自分にないとは言い切れない。恥じる心があるのが人間だと仏教は教えており、ここで本当に出会いたいと思います」と話す。

引き続いて座卓を囲んだ茶話会。「お体はいかが?」と持参した菓子を配る坊守に入所者が「目が悪くなった」と世間話が弾み、女性僧侶の発言から論議が盛り上がった。何度も参加するその僧侶は「門徒さんから『通うのは自分の満足のためでは』と言われて考え込んでしまった」と。すると同園入所者の真宗同朋会長の鈴木幹雄さん(83)が「それはその人がここを特別な場所と思い込んでいるからでは。友人の所へ行くならそんなことは言わないでしょう」と応じる。「私たちは今なお、なかなかただの一人の人になり切れんのです。普通に友人として来てくれればいい」とかみしめるような言葉に、僧侶は「来ます」とうなずいた。

「来ないといけない、と自分の中で義務になるとおかしいのかな」「世の中の多数派から排除された人の目を見て思いを致すことは難しいけれど大事」。中杉副住職も「仲良くするだけではなく、隔離という問題を自分で問い続け、人間とは何かまで考えないといけない」と話す。同様に抑圧の歴史が続く水俣病問題で、作家の石牟礼道子さんが患者をどう支えるのか悩みながらも苦しみを共有するのを「もだえ加勢する」と表現したことも引かれ、「支援の立場」が熱心に語り合われた。

高齢化が激しい園内でインフルエンザも流行し、この日の会には入所者はわずか。多くの僧侶の側が学ばせてもらい、支えられているように見える。終了後に鈴木さんが園内を見学に案内した。隔離政策の様々な資料を展示する「愛生園歴史館」では戦後の島内の模型を前に「患者が亡くなってもすぐには坊さんの葬儀はなく、皆で園の納骨堂まで運んだ」と説明する。模型の海岸部に「自殺場所」とある表示に、「絶望した人が島の松林でも自殺した。私と一緒に入った人も3カ月で首をつりました」と顔を曇らせた。

かつて船で患者が強制的に運ばれてきた「収容桟橋」の前に、患者を数日間閉じ込めて身体検査や尋問をした「回春寮」の建物が残る。病室跡に当時のベッドが展示され、13歳で収容された鈴木さんは「僕はあの窓際に寝かされた」と回顧する。多くの収容者はここで自分が二度と帰れないことを実感したという。廊下を隔て、感染症を排除するため患者をクレゾール液に漬けた「消毒風呂」を鈴木さんは示した。むき出しのコンクリート壁にさびて残る薬剤注入用鉄パイプが、ナチス時代の収容所でユダヤ人を殺りくしたガス室を連想させる。戦争の加害も差別と抑圧の歴史も、それがなかったことのように語られる。「この島を忘れないでほしい」。「偏見・差別のない世界をつくるためハンセン病の歴史を学ぶ」とうたった歴史館に掲げられたこの言葉は、鈴木さんの思いでもある。

(北村敏泰)

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