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ハンセン病療養所⑨ 入所者と被災者、気持ち通わせる

光明園の居住棟に目立つ空き家は被災地の仮設住宅を思わせる 光明園の居住棟に目立つ空き家は被災地の仮設住宅を思わせる

人と人とのつながりを求めてハンセン病療養所に通う中杉隆法副住職は、東日本大震災に伴う福島第1原発事故で被災した家族を招いての「ワクワク保養ツアーin邑久光明園」を、震災翌年から毎年開いている。事故で避難生活を送ったり放射能汚染の脅威にさらされたりしている子供らとその親に夏休みの1週間、園に泊まり込んで入所者と交流しながらゆっくりしてもらう企画。震災後に入所者から、園の空き施設を被災者のために活用してほしいとの提案があったのがきっかけだった。

一昨年7月の第6回には6家族の母子計16人が参加した。園長の医師からハンセン病問題の歴史について話を聞き、資料展示を見学する。会館でゲームや球技、バーベキュー、近くの浜での海水浴、花火大会など連日盛りだくさんのスケジュール。Tシャツ姿の子供らは、海を臨み林にせみ時雨が降り注ぐ広々とした園の敷地を駆け回って楽しんだ。吉田藤作さんが元気な子供たちの様子をビデオで撮影し、ほかの入所者も交えて僧侶やボランティアによる炊き出しのカレーライスを食べながら話が弾む。話題は勢い、原発事故の被害に及ぶ。福島県郡山市から初めて参加した母親(39)は、はしゃぐ男女2人の我が子を見やりながら「向こうではピリピリしていますが、ここでははだしでほっとします」。農家である実家が作った野菜も不安で食べられない。夫が仕事で避難できなくても子育てを考えると別居は無理だ。周囲には離婚した人もいると言う。

小学3年の長男、3歳の長女と訪れた吉田幸子さん(38)は「放射能の影響はこの先何十年も心配ですが、今自分でできるのはこのような保養で伸び伸びすることくらいしかありません」と話す。事故当時は男児を身ごもっていたが栃木の実家まで避難を余儀なくされた。夫が勤め人のため2週間で戻ったものの不安にさいなまれる日々。結局死産となり、衝撃で気持ちはどん底だったという。安全な飲料水や農産物を買い求めるために経済的負担も増えた。年月がたち、せめて子供には不安を抱かせないように土遊びなどもさせているが、線量計で高い値が出ると「草むらに入っては駄目よ」と告げる。生まれた時から被ばくの定期検査を受けている長女は「ほうしゃのう」という言葉を覚えてしまった。

事故の被災者に共通する苦悩だが、幸子さんは保養に参加すると「お金持ちね」と変わり者のように言われるので、知人には「ちょっと親戚の所に行く」と告げて来た。被害者の間に溝ができている現実。原発を推進してきた国や電力会社の加害責任をよそに、住民同士が補償金の有無でわだかまり、避難するかしないかで反目する。福島県内で被災者支援を続ける僧侶によると、遠方の避難先で職も失った人がスーパーで総菜を買うと「補償金で優雅に暮らしている」と後ろ指をさされ、そのようなストレスも心身をむしばんでいるという。

同県では事故による避難者がなお4万2千人に達し、その影響による「震災関連死」は自死も含めて2200人超。地震・津波の「直接死」1605人を大きく上回り、宮城や岩手が千人未満でとどまっているのに比して、今も増え続けている。母親たちの話に元患者の入所者たちも「大変だね」と聞き入る。幸子さんは「国の誤った政策でひどい目に遭った者同士、気持ちが通じた気がします」とうなずいた。

(北村敏泰)

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