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ひとさじの会③ どう困っているか知るのが大事

隅田川沿いを夜回りする高瀬代表とボランティアたち 隅田川沿いを夜回りする高瀬代表とボランティアたち

「ひとさじの会」の夜回りによる配食を10年続ける高瀬顕功代表は「1年すると、季節で天候が厳しかったり景色が変わったり、現場のいろんなことが見えてくる。顔見知りになってつながることが大事です」と言う。街灯の薄明かりの中を代表らと隅田川沿いを歩き、野宿者に次々と食べ物を配る。「おじさん」と話が弾むこともある。午後8時半すぎ、「ここらで暮らしてもう16年かな」と話す70代の男性はブルーシートで作ったテントの中で服を重ね着してうずくまり、おにぎりに丁寧に礼を言った。屋根が飛ばないようにロープを渡し、水の入ったペットボトルを何本も結んで重しにしている。若い頃は土木作業をしていたという口ぶりに東北の訛りがある。「20代で結婚もしたけど別れた。体を壊して仕事ができなくなり、金も尽きて家を出たんだよ。子供がいなくて良かった」

テント内には幾つもの箱、毛布や鍋、食器類に小さな置き時計。少し暗いヘッドランプを頭に着けて照明にする男性は、差し入れの揚げ物に「これ、うまそうだね」と目を細めた。道端で空き缶集めをしているが、90個集めてやっと1キロになり160円で売れる程度。「この頃ぁ不景気で落ちてないよ」。収入ゼロで何も食べない日が続くことも多く、あちこちの炊き出しで命をつないでいる。だが、高瀬代表が靴下を勧めると「ありがとう。でも2枚履いててあったかいから大丈夫、要らないよ」と。以前、通行人に石を投げられた。「役所も来るけど、出て行けと言うなら、どこへ行けばいいか教えてほしい。朝早いからもう寝るよ」。通行人が出る前に空き缶を探さねばならないからだが、「次は4月1日にまた来ます」と告げると男性は「嘘(エイプリルフール)じゃないよね」とほほ笑んだ。

河川敷道路をどんどん進むと、着の身着のままで路面に寝る人、ガード下で今から段ボールの囲いを組み立てる人など様子はまちまち。だが皆がおにぎりに必ず感謝の言葉を口にする。橋のたもとの何かの空き小屋に住む中年の男性は、頑張って空き缶を山のように集め、周囲に積み上げていた。「お金をためて博多に帰ろうと思ってる」。しばらく談笑すると、「これ持ってって」とワンカップの焼酎をくれた。公園では、咲き始めた桜の下で6人のおじさんたちがささやかな“宴会”をしている。食べ物はわずかで、配食に大喜びで盛り上がる。しかし、少し離れた場所には独り黙ってうつむいた男性も座っている。

道へ出ると、向こうから高瀬代表と顔見知りの男性がやって来た。先ほど、いつものねぐらが空になっているので心配していた人だ。「おう、散歩だよ」「会えて良かった」。互いに笑い合い、代表が「寝袋どう?」と尋ねると「いいよ。役所に持ってかれるから。寒くてかなわんけど、坊さんも修行厳しいんだろ?」。「花見で人出が増えると居づらいかもしれませんね」。おにぎりと薬を手渡して別れた後、代表はそう懸念した。

20人以上に食事を配り、頭陀袋もかなり軽くなった。夜回りでは厳しい状況にもたびたび遭う。高瀬代表は以前、野宿者におにぎりを渡そうとして「要らないって言ってるだろ! 声掛けるな」と言われた。「一生懸命しているのに、何で?」とも思うが、実際に人々がどのように困っているのかをまず知ることが大事だと分かった。「すると、活動はかくあるべしではなく自然体になるのです」

(北村敏泰)

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