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ひとさじの会⑥ ボランティアら心を寄せて

夜回り前に欠かさない法要で皆が自分と向き合う 夜回り前に欠かさない法要で皆が自分と向き合う

ひとさじの会の夜回りには宗教者でないボランティアも多い。光照院でのおにぎり作りでは、「何か役に立ちたくて」と訪れた中年女性もいた。調理をしながら「あのおじさん、どうしてるかな」などと和やかに話が弾む。女子高生2人は「家でのんびりするよりは社会勉強に」と参加した。常連に「しっかりね」と励まされて夜の配食に出発する。ボランティアたちは何を感じているのか。初めて参加した20代の女子大生の感想文がある。

「その時までホームレスの人に良くない印象を持っていた……貧しいのは働かない彼ら自身のせい、仕方ないと……。髭もじゃでぼろ服とばかり思っていたが、小ぎれいで驚いた……。昼間は賑やかな街で行き場がなく、夜に店のシャッター前に……彼らを追い出すのは住民から考えたら当たり前かも知れないが、道徳的にはそうでないかも知れない。……皆感じが良く礼儀正しい。物だけが目当てで食料をかすめ取られるかも知れないと思っていた自分が恥ずかしい」

「……ありがとうと言ってもらい、心が通じたようで嬉しかった。彼らの視線に合わせて膝を曲げた時、あまりに大きい夜の闇に孤独と不安が伝わって悲しかった。……いくつも大切なことを学んだ。自分の見える世界を豊かな物で固めてしまって社会問題から目を背けていたのではないかと」

しかし夜回り活動はおにぎりや少しの物資を配るだけ、ともいえる。時には機嫌が悪くて「なんだ、こんな物要らん! 俺を救ってみろ」と拒絶する野宿者もいる、と高瀬顕功代表は言う。確かに全員を路上から脱出して生活が安定するまで支援できるわけではなく、貧困問題の根本解決にはならない。「配食は月2回。じゃあ後の日は何してるんだとも思います。でも、自分たちは大したことはできていないと自覚し、それでもくじけずに続けることが大事ではないでしょうか」

互いのつながりの中で「誰かの助けになっている」という連帯感を感じるボランティアたちもしかし、悲惨な現実に打ちのめされる。いつまでも路上から脱出できず、道端で命を終える。そんな状況を目の当たりにして、「おにぎりだけでいいのか」とやりきれない無力感にとらわれ、「支援者」と「被支援者」の関係をどうしようもない自らに、罪悪感さえ抱いて心が痛むこともある。だが、ともすれば折れそうになる気持ちを支えることにひとさじの会の法要が役立っている、と事務局長の吉水岳彦・光照院副住職は考える。

夜回り前に全員が本堂に座って「路上で亡くなった方々に思いを致し」と合掌して念仏を唱え、「願わくは……有縁の諸精霊位の苦を抜き楽を与えしめ……」と回向する。ボランティアはそれぞれの形で参列するが、「名前も知らないおじさんたちのために皆が心を込めてこんなに祈れるなんて」「人を思う、心を寄せるってことはできるんだ」と気付き、自らに向き合う機会を得るという。

同じ言葉を大阪・釜ケ崎の夏の慰霊祭でも聞いた。「路上やドヤ(簡易宿泊所)で亡くなった仲間たちを神様、仏様、あなたの懐に導き入れてください……仲間たちを立ち上がらせ……」。日雇い労働者の街で反貧困の活動を続ける本田哲郎神父は、おっちゃんたちの前でこう祈る。宗教ならではの「祈り」の力。それは晴れがましい「祈りの集い」でも宗教施設内での儀式でもなく、まさに現場で「行い」と共にされるからこそ発揮されている力だ。

(北村敏泰)

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