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宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
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第16回「涙骨賞」を募集 中外日報宗教文化講座

ひとさじの会⑦ 寄り添い、支え合う縁を目指す

夜回りに備え、配布する薬や衣類をかばんに詰めるメンバーたち 夜回りに備え、配布する薬や衣類をかばんに詰めるメンバーたち

ひとさじの会の理念を事務局長の吉水岳彦副住職は「病人にかゆを差し出した法然上人が娑婆の苦を直視され、有限な自己と向き合われたことを模範として、わずかな支援さえ満足にできない私たちだが、それでも人に寄り添いたいという思い。凡夫の行う支援です」と説明する。

以前、長年路上生活をする80代の男性を案じてアパートや施設での生活に導こうとしたが、事情を知る支援団体員から「それは彼には苦痛でしかないのでは。その方の思うような路上脱出後の幸せな生活をもっと一緒に考えねば」と言われた。「こうすれば間違いないという浅はかな思い込みが私にあった。活動の慣れからですね」。吉水副住職は、隅田公園でシラミの卵だらけの服を替え体を拭いてあげたその男性が姿を消した後、「いろんなことを教えてもらった。菩薩とはこのようにして私の心の弱さや考えの小ささを教え導いて下さるのだ」と思った。

路上で倒れたある男性は、衰弱が激しいのに搬送先の病院に拒否され戻された。話を聞いた副住職はまた救急車を呼ぶことしか思い付かず、結局支援団体が用意したカプセルホテルで休ませ、翌日に付き添って入院することになった。副住職は自分の力ではどうにもならないという無力感に打ちひしがれた。「必ずしもベストな対応ができない私自身の活動は『自分は善いことをしている』という自己満足かもしれません。そして支援してあげていると私が考える人に、実はこちらが育てられているのです」と話し、「大したことしかできない凡夫であるという自覚があればこそ、相手の話に耳を傾けてより良い方向を目指すことができるのです」と強調する。

そして、「相手をこうに違いないと決め付けず、完全に理解することは到底できない自分を知ること」と語りながらも、「大上段から『救おう』『助けよう』でもなければ、凡夫で無力だからと開き直って苦しむ人を前に何もしないのでもなく、既にある縁を支え、新たな縁を結び、様々な出会いの中で柔らかな心でそれぞれが学びを得ることができる人間関係を育むことが大事」と述べる。ここから吉水副住職は、自分たちの支援活動は「教化」だという。だがこれは上から教えを伝道するというようなものでは決してない。

「支援者は問題に我が事として向き合い、相手に寄り添わせていただくことで自己の学びを得、被支援者の側も何かを感じ取っていただいています。教化とは他者との関わりによる自己完成ともいえます」。おにぎりを届けたある野宿者が「ここにもう一人いたろ? ずっと捜していた奥さんが迎えに来て戻ったんだ。夫婦でおにぎりに感謝の気持ちを伝えたいと言ってたから、その分までありがとうな」とほほ笑んだ。副住職は涙が出た。

「路上の方々は世の中が思うようにいかず、元々自分がどうしようもないと思っておられる。だからそれに接した者が気付きを得るのです」。念仏の教えでは、阿弥陀如来の前では皆が平等で同じ凡夫にすぎない。救済とは仏と凡夫という関係においてのみ成立するものであり、自分たちの活動は凡夫が凡夫のために力を尽くすことだと言う。野宿の日雇い労働者が「ディズニーランドの基礎は昔、俺が造った」などと世間との“つながり”を話すのは、仏教で言う“縁”だと副住職は見る。「寄り添いによって互いに支え合う縁を目指すことが求められるのです」

(北村敏泰)

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