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第16回「涙骨賞」を募集 中外日報宗教文化講座

ひとさじの会⑧ 大きな問題はつながりの欠如

公園には鉄パイプの囲いがされ、野宿を禁止する看板が 公園には鉄パイプの囲いがされ、野宿を禁止する看板が

元号が替わった5月に発表された厚生労働省の毎月勤労統計(3月確報)の賃金指数は、「現金給与総額」が89・2と前年比マイナス1・3%。3カ月連続で前年を下回った。離職率は全体で2・49%に上り前年より増えている。政府の「5月月例経済報告」では、「景気は緩やかに回復」としながらも「設備投資」や「生産」で判断を下方修正した。総務省調査の完全失業率は2・4%に達し、4カ月連続2%台。「新たな時代」が声高に叫ばれても、社会の苦悩、職もなく貧困にあえぐ路上の人たちの生活は変わらない。

「同じ世を共に生きている限り、自分と無関係なものなどない。私たちが相互に関わり合わなければ生きていけないだけではなく、社会における困難な問題を我が事と直視すべきだとの教えです」。ひとさじの会事務局長の吉水岳彦副住職は仏教の「諸法無我」をそう説く。自分たちの活動を「経済的にも精神的にも悩みを抱える人が増加し続け混迷する社会に、慈しみの種をまき慈しみの心に満ちた社会の形成を目指すもの」と語り、教えは行動にして初めて力を持つという。「なぜ活動するか理由はありません。関わった方が望むからするのです」

研究職として宗門校の教壇に立つ高瀬顕功代表は、子供らが社会の偏見に影響されてホームレスを「自己責任」と否定的に捉えていることに気付き、「人はいろんな理由やタイミングでそうなる」と教える。自身は、路上に暮らし空き缶集めで生計を立てるといった生活がその人にとって必ずしも「不幸」ではなく、善しあしは別にして「こういう生き方もあるのだ」と思えるという。それは長年、野宿の人々と付き合ってきた実感。「ちょっと彼らに関われば、ああこんな人もいるんだと感じる。だから、まず現場に触れてほしい」。そうすれば、野宿者を子供が襲撃したり行政が排除したりする動きにも「そうじゃないよ」と言ってくれる人が増えると考える。ホームレスを生み出すような社会構造を変革するのは困難でも、「ホームレスになっても生きていける」社会を目指している。

高瀬代表がそう考えるようになった6年前の体験がある。夜の商店街のアーケードの下で寝ている人におにぎりを配っていると、顔見知りの一人の男性が話し掛けてきた。少し酒が入りよくしゃべる。「今日はどう?」と聞くと、「仕事探しに行くのにも、バスにも乗れないよ。おにぎりじゃあ……」と言う。高瀬代表はとっさに「金を要求しているのかな」と受け取った。だが男性はその心を悟ったかのように「俺たちは話をしてえんだよ!」と口にした。「普段から思いをぶつける先がなく、本当に誰かと話をしたかったんですね。自分が偏見を持っていることに気付きました」

不愛想で、おにぎりで初めて口を開く人もいる。だが、「生活さえ支えたらいいというものではない」と言う。行政による生活保護、自立支援法の運用が住居確保から生保、就労の一辺倒で硬直化しているとの支援団体からの指摘は多い。「大きな問題は人とのつながりの欠如」と高瀬代表が言うように、貧困問題でも虐待や自死の問題でも「孤立」への対応が重要な課題だ。夜回りをしていて「ここにいた人が体を壊して死んだよ」という話を時々聞く。無援が無縁につながる、そんな世間で死を迎えることは究極の孤立だ。

(北村敏泰)

ボランティアや僧侶が食品を仕分けし荷造りする

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持続可能な社会 SDGsと宗教界の貢献

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出生前検査への対応 いのちの意義捉え直す

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政治家は判断示せ 核兵器禁止が指し示す未来

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