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宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
第16回「涙骨賞」を募集
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第16回「涙骨賞」を募集 中外日報宗教文化講座

ひとさじの会⑨ 仲間のところへ往ける「結の墓」

困窮者たちが眠る結の墓には参拝が絶えない 困窮者たちが眠る結の墓には参拝が絶えない

路上生活での孤立無援の死。ひとさじの会の原点であり、もう一つの活動の柱が生活困窮者の葬送支援だ。2007年、山谷にある光照院の吉水岳彦副住職が野宿者らを支援するNPO「もやい」から困窮者の墓を造りたいと相談を受けたのが始まりだった。メンバーと協議する中で元野宿者の男性が発した言葉が副住職の心に突き刺さった。「路上で生活するようになって一度あらゆる縁を絶ってしまった。でも『もやい』のおかげでアパート暮らしに戻り、新たに親しい仲間もできた。自分が死んだ時、仲間たちと一緒のところに往くんだと思えたら、残りの人生もしっかり生きられるように思う」

野宿者は普段、口では「どうせ俺は無縁仏になる」と言いながらも内心ではつながりを望んでいることが多い。吉水副住職はそれまで、法要などで僧侶として「誰しもが亡くなれば阿弥陀様がお浄土に導いてくださる」と説いていたが、心からそれを切望する人に出会って胸を揺すられた。70代のその男性は幼時に若い父親が事故死し、きょうだい3人は親戚に預けられたが生活困難でろくに学校に行けなかった。15歳で希望を胸に上京したものの工場など職を転々とせざるを得ず、収入が少なくて結婚もできなかった。まめに働いて60歳で定年退職したが知人に金をだまし取られて路上生活に。体を壊して「もやい」の助けを得た。今は支援活動を手伝っている。

「この世のこの墓と次の世での極楽浄土。無常な世で大切な人と再び会えると約束されれば心強いことです」。吉水副住職たちは人生の“終結”“結縁”からそれを「結の墓」と名付け、古い五輪塔を加工してメンバーらの支援で光照院境内の墓地に建立した。困窮者が亡くなると支援団体から寺に連絡が入り、吉水副住職がメンバーと火葬場に出向いて回向する。葬儀会場で葬式が営まれる例もある。遺骨は支援者が運び、知人が集まる中で墓に納められる。野宿していてもよほど体調が悪くなければ参列する仲間は多い。毎年11月には合同追悼法要を営み、支援関係者や仲間が集う。

吉水副住職は「普通の葬送、法事と何ら変わりません。普段から法事をする僧侶はその意味をもっと考えなければ」と言い、葬儀とは人間関係の再構築の場だという。人の死で集まることは悲しくはあり、参列者は「自分はまだ生きていられるけど、来年は自分かも」としんみりするが、そこで皆がつながっていることを実感する。

結の墓には現在11人が納骨され、本堂で預かる遺骨もある。周りにはキリスト教系も含めた支援団体関係の墓も幾つかあり、訪問看護NPOの墓には看護師たちが看取ってきた身寄りのない人たちの遺骨数十人分を一度に納めた。それらが満杯になった場合に備えて合祀する「観音供養塔」が墓地中央にあり、その観音像の首飾りには菩提樹と十字架がかかる。「ここに私も入るのです」と吉水副住職はうなずいた。

支援をしていた元野宿の60代の男性が病気で亡くなる直前、吉水副住職らを枕元に招いてくれた。旅立つ前に会っておきたい仲間の名前を伝えており、多くの人が次々訪れる。男性は長年ファンである演歌歌手とのツーショットの写真を皆に誇らしげに見せた。「自分の宝物」と。数日後に死去し吉水副住職が導師となって営んだ葬儀には、その歌手から立派な花が贈られてきた。会葬者は笑顔になり、男性の豊かな人生の最期に思いを寄せた。

(北村敏泰)

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