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第16回「涙骨賞」を募集 中外日報宗教文化講座

ひとさじの会⑩ 「五輪美化」名目に排除激しく

チュウさんの「毛布箱」がある高架下は柵で入れず、ひっそりしている チュウさんの「毛布箱」がある高架下は柵で入れず、ひっそりしている

ひとさじの会の夜回りは午後10時半頃終わり、各コースのメンバーが浅草・吾妻橋に集合して簡単な報告会をする。配食人数や野宿の状況、気になる問題点などだ。隅田川沿い台東区コースは約2・5キロの道のりで配布はいつも二十数人。6月の夜回りでは、地べたに寝ている高齢女性や足が痛くて歩けないという男性もいた。他県から来て、肺気腫で体調が悪く「生活保護を受けたい」と困り果てる男性には、明かりのない路上で高瀬顕功代表が体調や生活環境を聞き取り、地図を手渡して地元医療支援団体に紹介した。男性はベンチにしゃがんだまま深々と頭を下げた。背後に東京スカイツリーのイルミネーションが輝き、オリンピックをPRする英語の文字が麗々しく浮かぶ。

スカイツリーが建設中の2010年夏、近くの桜橋たもとで路上生活をしていた「チュウさん」という中年男性の水死体が隅田川で見つかった。チュウさんは野宿で体を壊し、入院していったんは生活保護を受けたが、また公園に戻ってきた。だが区役所職員が「ここには住まわせない」と強く拒絶。チュウさんは「行く所がない。お願いします」と土下座し地面に頭を擦り付けて懇願したが聞き入れられず、橋から姿を消した。投身したのか事故か、あるいは……。2日後に変わり果てたチュウさんの遺体が収容されるのを見たホームレス仲間たちは、橋のたもとで追悼の集まりを持った。

誰かが段ボールを売った金で古びて手の取れた阿弥陀像と花を買い求め、道端に供えた。前にブルーシートを敷き弁当や酒も持ち寄った。吉水岳彦・光照院副住職が香炉を持参して懇ろに読経すると、仲間は念仏を唱える。「優しかった。少ししかない食べ物を分けてくれたよ」「寒い日に、一緒に俺の小屋で寝ろと毛布も貸してくれた。助かった」。思い出話が次々に出、「何でかばってやれなかったのか」と涙声も聞こえた。誰にでも親切だったチュウさんの人柄を偲んで、大工の覚えのある仲間がベニヤ板で箱を作り、中に毛布を入れて橋近くに置いた。「命を守る毛布箱 ご自由にお使い下さい」。青ペンキを塗った箱にそう書き、困った野宿者がいつでも使えるようにした。

「無縁社会などといわれますが、人と人とのつながりはこんなに温かいのです」。一周忌でも読経をした副住職はそう話す。チュウさんの箱は橋たもとの高速道路の高架下にあり、誰かがござと夏用の肌布団も入れた。だが雨露をしのげるその高架下には鉄パイプで囲いがされ、「立入禁止」の札がかかる。ツリー周辺で野宿者の厳しい追い出しが相次いだように今、都内各地の公園などで「2020年オリンピックに向けた美化」などを名目に排除が激しくなっている。夜回り報告でも、初参加のボランティア学生が「道に『就寝禁止』の張り紙が多く、おじさんが困っていた。社会の厳しさを知りました」と話した。「浅草で野宿している人が警官から『来年はもういられないよ』と言われた」との報告も。

元号が替わって「新しい時代」と世間が騒ぎ「五輪景気」に沸いても、路上の人々の悲惨な生活もそれを生み出す社会も、変わらないどころか影が深まる一方だ。「経済発展が人のいのちより、つながりより大切なものでしょうか? 本当にそれでいいのでしょうか」。そう疑問を投げ掛ける吉水副住職の声が震えているようだった。

(北村敏泰)

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