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第16回「涙骨賞」を募集
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第16回「涙骨賞」を募集 中外日報宗教文化講座

おやつクラブ① “自己満足”に冷や水、一層頑張る

母子が衰弱死したマンションは今も人けがなく静まり返る(大阪市内) 母子が衰弱死したマンションは今も人けがなく静まり返る(大阪市内)

「大阪において逝去せらる母子の霊位ならびに困苦の果てに逝去せらる各霊位、供養の……」

奈良県田原本町の浄土宗安養寺で5月23日に行われた「おてらおやつクラブ」の食品発送会で作業に先立って法要が営まれ、事務局の僧侶によって回向文が読み上げられた。続く表白では「子を愛で子に詫びながらにして 孤独の中 いのち尽きし母親の想いいかばかりか……」と。2013年の同月24日、大阪市内のマンションの一室で28歳の母親と3歳の長男が亡くなっているのが見つかった。餓死とみられ、死後数カ月を経て布団に横たわった遺体の一部はミイラ化していた。生活苦で電気もガスも止められて室内には小瓶の食塩以外に食べ物はなく、ガス料金請求書の封筒に走り書きのメモがあった。

「最後におなかいっぱい食べさせられなくて、ごめんね」

同寺の松島靖朗住職(43)が一人親の貧困家庭支援に立ち上がるきっかけになった事件だ。報道では母親はDVを受けて夫と別居し、役所に生活保護の相談に訪れたが支援を得られず、困窮孤立していた。当時、安倍内閣が保護申請の手続きを煩雑、厳格化し事実上受給の道を狭める法の「抜本的改正」案を閣議決定したばかりだった。同市のオフィスビルの多い市街地にあるこの6階建てマンションは、急な狭い階段だけでエレベーターはなく、3階のその部屋はえんじ色の鉄扉が閉ざされて静まり返っている。近所に住む男性は「昔は木造平屋の家や店ばかりで付き合いの濃い下町やったけど、今は全部高層になって住んでる人の顔も知らん。びっくりしたなあ」と話す。立ち並ぶ細長いビルには軒並み監視カメラが道路に向けて据えられていた。

事件に「今どきこんなことが」とショックを受け、何とかしなくてはと考えた松島住職は、以前から寺で余って気になっていた檀家らからの「お供え」の食品を生かすことを思い付く。菓子や果物を持って大阪で母子家庭など困窮者支援をしている団体を訪れ、「何かできる事は?」と申し入れた。2世帯を紹介され、毎月1回、おやつや食品を送り始める。3カ月後、どんな様子かと団体を訪れた松島住職は、だが職員の言葉に驚いた。「喜ばれていますよ。でも、これでは全然足りていません」

厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査の結果」(16年)によると、全国で一人親世帯は約142万。うち父子家庭は同18万7千世帯なのに対し、母子家庭は同123万2千世帯に上り、約9割を占める。その母親の81・8%が就業しているが、うち正規の労働に就く人はわずか44・2%。母親の平均年間就労収入は200万円しかなく、父親の398万円の半分近い。

「感謝されていると思い、その“自己満足”を確認するために行ったようなものでしたから大変な衝撃でした」と松島住職は振り返る。「もっと頑張れ、と背中を押されたのです」。住職はいわば“梵天勧請”だったと感じる。人間が救われるための悟りの道を教えるように、釈迦が梵天に請われた逸話。そのように、仏教者として力を尽くし人にもっと寄り添うようにと言われた。ならば、広く呼び掛けて仲間を増やし支援の輪を広げようと始めたのがおやつクラブだった。そのネットワークは宗派も超え、現在全国で1200カ寺近くが参加。協力関係にある支援団体は420余り、食べ物を送る家庭は毎月延べ1万世帯に上る。「でも、まだまだです」

(北村敏泰)

ボランティアや僧侶が食品を仕分けし荷造りする

おやつクラブ③ 支援側と家庭、心通わせる手紙

7月19日

安養寺でのおてらおやつクラブの発送会で事務局の坂下佳織さんは、発送用の高さ45センチほどの段ボール箱に食品を詰める手順をホワイトボードの注意書きを示して細かく説明する。 …

食品発送会では必ず法要が営まれる(安養寺)

おやつクラブ② 困窮者に思いはせ、供物に感謝

7月10日

おてらおやつクラブは奈良県田原本町の安養寺に事務局を置き、檀家や市民、支援者から寄せられた食品などを参加各寺院がそれぞれストックして、各地の貧困家庭支援団体を通じて定期的…

チュウさんの「毛布箱」がある高架下は柵で入れず、ひっそりしている

ひとさじの会⑩ 「五輪美化」名目に排除激しく

6月28日

ひとさじの会の夜回りは午後10時半頃終わり、各コースのメンバーが浅草・吾妻橋に集合して簡単な報告会をする。配食人数や野宿の状況、気になる問題点などだ。隅田川沿い台東区コー…

持続可能な社会 SDGsと宗教界の貢献

社説7月19日

出生前検査への対応 いのちの意義捉え直す

社説7月17日

政治家は判断示せ 核兵器禁止が指し示す未来

社説7月12日
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