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自死に向き合う僧侶⑤ 往復書簡検証、時には激論も

相談が終わり古くなった手紙は焚き上げられる 相談が終わり古くなった手紙は焚き上げられる

「うーん、この答えはどうなのか」。文面から目を上げた僧侶がメモを取り、口を開いた。「自死・自殺に向き合う僧侶の会」では毎月1回、相談と応答の手紙全部を見直す「事後検証会」を開く。前田宥全住職と往復書簡担当の僧侶5~8人ほどが集まって手紙のコピーを配って読み、忌憚なく意見を交わす。じっくりと6時間に及ぶことも。「こちらの気持ちを伝えないで相手に寄り添えているのかな」「共感するだけでなく、もっと突っ込んで意見も言う方が」と僧侶の姿勢を問う遠慮のない指摘も出て、時には激論にもなる。例えばこんな具合だ。

「故人は仏の世界に行っていますか?」という遺族の手紙。仏教の立場から「そうです。安心してください」という単純な応答では「あまりに安易」と指摘される。相談者が「仏の世界に行ってほしくない」つまり、こんなに私を苦しませた人が穏やかに仏界に行くなんて許せないという気持ちを抱いていることもあるからだ。だから、「なぜそれが気になるのですか?」と質問して相手の真意を明らかにしなければならない。その答えで、主訴つまり相談者が何を悩んでいるのかに近づくことができる。

前田住職は「仏教の質問なら宗派によって一般的見解は異なるでしょうが、相談はあくまでその相談者個人の問題。どの相談も言葉尻ではなくその気持ちこそが真実であり、それを基準にしないと関わる上で間違いを犯してしまう」と語る。その言葉が深いところで何を意味するのか、相談者と僧侶が理解を共有していなければならない。

検証会でそれが曖昧とされれば、僧侶は再度手紙で質問をする。例えば「死んだら楽になる」という訴えには、「楽とはどういうことですか」「死ぬことだけが楽ですか」と。相談者が「尋ねられてハッとした。わだかまりがあった」と気付きを明かすこともある。

往復書簡でこのように質問を交わし、それを繰り返すのはまだるっこく見えるし、実際に相当な根気が要ると前田住職は言う。だが、面談で即答を求められるのに比べて、相談者も僧侶の側もじっくり心に向き合うことができるのは手紙の利点だ。検証会では、教訓となる事例を全員で共有し、報告書にまとめてメーリングリストで会員に配信する。ある月には「相談者が誰かを批判する場合、詳しい状況を知り得ない我々が安易に同調しない。それより、批判したいつらい気持ちを受け止めることで信頼関係も深まり、批判し続けるという悪状況に相談者が気付くことになる」との報告があった。

僧侶の会では、このフィードバックによって相談活動のレベル向上を図っている。報告では、引きこもっていた青年が作業所に行こうかと考えたケースを例に「逆に人間関係で傷つけられる恐れもある。状況が不明瞭なのに相談者の行動を後押ししない。動機や事情を尋ねて慎重に対処し、『前向きな気持ちが出てきたのですね』と現状への思いを伝えましょう」など、具体的なアドバイスも多い。

そしてさらに数カ月に1回、会員定例会で「事例検討会」を行う。書簡をプロジェクターで投影してやりとりの内容を全員で検討し、何が問題なのか協議したり課題を決めてロールプレーをしたりすることも。そんな中から例えば「長期にわたるリピーターの相談者は主訴が見えにくくなるので、対応の方法を見直すことも重要」といった提起も出てくる。

(北村敏泰)

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