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自死に向き合う僧侶⑥ 遺族が集い「自分だけじゃない」

遺族の集まりでは思いを届けるポストや茶席も用意される 遺族の集まりでは思いを届けるポストや茶席も用意される

「自死・自殺に向き合う僧侶の会」のもう一方の重要な活動は自死者の遺族のケアだ。毎年2万数千に上る自死者数の少なくとも3~5倍の遺族がおり、近親者はもっと多い。その中には悲嘆から後追いを考える人もいる。同会共同代表の吉田尚英住職は「周りから白眼視され、なぜ救えなかったのかと自分を責める苦しみは想像を絶します」。遺族ケア担当の浦上哲也・浄土真宗なごみ庵(横浜市神奈川区)住職(46)は「皆さん周囲の偏見で思いを外に出せなかったり、誰かと共有できないことで、より苦悩を強く感じています」と話す。そんな孤立状態にある遺族に苦しみを吐き出し、分かち合いをしてもらう会「いのちの集い」は毎月1回、東京・築地本願寺の一室で開かれる。

毎回数十人が参加、当番の僧侶が15分間法話をした後、8台ほどのテーブルに数人ずつ分かれ、それぞれに僧侶2人がつく。「ほかの方の話は他言しないように」「アドバイスや質問はその人の苦になることがあるのでなるべく避けてください」などの約束事の説明に続いて会が始まる。各テーブルにはパートナーを亡くした人、親や子供の人などいろんな遺族がいる。内容は完全に秘匿されているが、「鉛をのんだように胸が重く痛い」と泣きながら訴える人もおれば、肉親が死に至った経過を一見、淡々と話す人もいる。

だが誰も話さないことも結構ある。「自分のケースを話すとほかの参加者を傷つけるのではないか」との気遣い。「私は立ち直れたから、あなたも大丈夫」との後押しがとげになって突き刺さる人もいるし、「自分の方がもっと大変」と“不幸比べ”の泥沼に足を取られる人もいる。誰をも害さぬようにと息詰まるほど慎重に言葉を選び語る人も。ひび割れたガラス――そのように遺族の心はもろいのだ。聞き役、進行役に徹して原則はあまりしゃべらない僧侶たちは、沈黙が続くと「法話はいかがでしたか」などと口火を切る。

吉田住職は自死で地獄へ行くなどということはないという法話をする。人と人との縁の大切さを語る浦上住職は「なぜ自分だけこんなに悲しくつらいのかと絶望していた遺族が、多くの遺族が集まる場に来られ、自分だけじゃないんだと気付かれることで気持ちの変化が生じることが多い」と言う。我が子を失った母キサーゴータミーの仏教説話を想起させるが、それをしたり顔で紹介するような僧侶は集いにはいない。「遺族ご自身が気付くことが大切であって、私たち僧侶が『ほかの人も同様に苦しんでいる』と押し付けても意味がないからです」

参加者は女性が圧倒的に多く、会場に着いた途端に涙を流す人もいる。浦上住職は「やっとの思いで勇気を振り絞って来られ、ホッとして、ここは泣いてもいい場なんだと思われるのでしょう」と話す。自死遺族の分かち合いは、各地でも行政主催などいろいろあるが、同会の集いは参加者が多いのが特徴。浦上住職は「仏堂という場の力と、僧侶がいて法話も含めて心を込めて運営しているから」だという。

分かち合いが嫌だという遺族もいるが、同じ利点は毎年12月の自死者追悼法要にも当てはまる。これまで13回を数えた法要には毎回百数十~200人もの遺族が参列している。厳かな設えの中で、参加者たちは同じ思いで先立った人を偲び、心ゆくまで悲しむことができる。それはまさに宗教の、仏教の力だといえるだろう。

(北村敏泰)

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