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自死に向き合う僧侶⑩ どう答えるか、心の揺れ語り合う

僧侶の会の会員たちは月に1度、会合で意見をぶつけ合う 僧侶の会の会員たちは月に1度、会合で意見をぶつけ合う

「自坊で読経していて自死遺族の手紙を思い、涙が止まらなかった。『明日、主人の死んだ現場に行きます』というまさにその時刻にお勤めしていて」。自死・自殺に向き合う僧侶の会会員たちは月1回の集まりで様々な思いを語り合う。そこには、僧侶というより一人の人間として他者のいのちと向き合うすさまじい心の揺れがうかがえる。手紙相談に関わる僧侶は「死にたい」にどう答えるか悩みを打ち明けた。「それほどつらいのですね。よろしければなぜそうなのか話して下さい」と書いてもまた「死にたい」を繰り返すだけの返事。「震えるような学びの体験です」と話す。

別の僧侶は「生きている意味が分からない」との相談に「一緒に考えていきましょう」と答えた。だが「個人的には意味などなくてもと思うが、そんなに長く苦しんでこられたことを認めてあげるしかない」と言う。前田宥全住職が話したように、僧侶の会では「死にたい」という訴えを必ずしも否定しない姿勢を共有する。会員の意見を聞くと「自死を選ぶ権利、自由もあっていい。それは、思いとどまることと同様に懸命に生きる一つの在り方だ」「善しあしではなく、死を選ばなければならないほどの事情を他人が判断するのは無理ではないか」というのも目立つ。

しかし、そういう肯定的な見方もあれば、「正常な判断ができないほど追い詰められた危険な状態にある。その背景は理解し共感したとしても結果は残念」「いのちは自分のものではなく、自らの計らいを超えたもの。仏から親から授かったいのちを絶ってしまうのはもったいない」という立場も。「自死は殺生の一つなので、いけない」としつつ「念慮者の人生に何の責任も持てないのに、ただ止めるだけでいいのか。『死んではいけない』と言う自信がない」と明かす僧侶もいる。

「死んではいけない」ではなく「死んでほしくない」と告げることについて、共同代表の吉田尚英住職が各会員の見解を尋ねた。「相談者への思いも深まっていない段階で述べるのはしらじらしい」「その人の苦しみが長引くのを望まないので本人の選択を尊重する」「自死を防止できても生き生きした人生を取り戻せないなら、それでいいのか疑問」との声から、「そう告げる根拠を伝えるのが大事」「周囲の人の悲しみの連鎖を防ぎたいから」「どんなつらいこともいつしか乗り越えられるのを私自身が経験したから」という意見もある。

一方、「相談を通じてつながった相手、縁ある人に死んでほしくない」「その人の苦悩を十分に聞き取って、自死の選択がやむを得ない決断であれば、引き止める理由は『死んでほしくない』しか残らない」という僧侶も。そして、こんな葛藤の告白もあった。「『死んでほしくない』の背景には自分のエゴがあると思う。自分が関わった人が死ぬことで傷つきたくない。あなたに救われた、と言ってもらいたい」。それでも、そんな煩悶の中に相手が何かを感じてくれたらという期待を込めてだ。

だが往復書簡を続けた末に相手が実際に自死することもある。そんな時は「夜中にドキドキする」と話す女性僧侶はしかし、「自分と関わったから亡くなったと思うのは傲慢。いのちはそんなものじゃない」と言い聞かせるように口にした。死後に家族が「私たちが知らない間に支えて下さり感謝します」と伝えてくることもある。

(北村敏泰)

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