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自死に向き合う僧侶⑪ 自己を見つめて活動続ける

12月1日の自死者追悼法要では僧侶たちが超宗派で読経した(僧侶の会提供) 12月1日の自死者追悼法要では僧侶たちが超宗派で読経した(僧侶の会提供)

自死・自殺に向き合う僧侶の会会員たちの論議は続く。その取り組みの心は「相談者に何とか生きてほしい」だといえ、手紙のやりとりによって立ち直るケースもいろいろだ。女性僧侶に、往復書簡を続けたある母親から「二人の子供が手首を切ろうとする私を喜ばせるために笑わせてくれる」との手紙が来た。気分に波のある人でようやく前向きになり、我が子のことを書いたのは初めて。結びに丁重な謝礼が記されていた。「二人の子にもこれから、あなたとのような出会いがあれば」と僧侶は“別れ”の返事を送った。

若い女性は「彼氏ができたのでもう大丈夫です。この人とやっていけます」ときっぱり書いてきた。別の母親は娘を自死で亡くした自分を責め続けていたが、短歌をし始めて歌集も出し、「これが生きがい」と知らせてきた。相談を受けていた僧侶は「悩みを言える人を探して手紙をくれたが、上向きになるとあれこれ悩みは書かなくなります」と言う。このような“卒業”は、だが、見極めも難しい。

同様に娘が鬱で命を絶ったという母親は自らも鬱になり死を望んだ。女性僧侶と書簡を交わし、ボランティア活動をするようになって、「もう私は大丈夫」と言う。ところが、僧侶の「本当に大丈夫ですか? もしまた何かあればいつでもお便り下さい」という気遣いに「卒業します。あなたにこれ以上、迷惑をかけたくないので」とこれまでの手紙に要した切手を入れた返事が送られてきた。僧侶は「まだ、あなたの問題は終わっていないのでは」と引き留めることにした。

取り組みを続けて自分が変化したという僧侶も多い。日蓮宗の女性僧侶は遺族の集いで分かち合いの話を聞くうち、檀家の葬儀でも、参列する親族との話し方が違ってきた。「以前は話を聞いても『そんなものか』という感じでしたが、今は様々な苦しみがあることを深く感じ取れます」

共同代表の吉田尚英住職は、自死者追悼法要で遺族が「年に1回、この日があるから生きていられる」と訴えるのを聞いて、仏教儀礼の意義を再認識した。「普段のお勤めへの心掛けが変わった」という。別の男性僧侶は「電車に乗っていて人身事故のアナウンスを聞くと、以前は『遅れて困ったなあ』だった」が、最近は投身した人がどんなに苦しかったかと思いをはせることができるようになった。

僧侶たちは仏教者という立場から、そして人間として悩み、自己を見つめながらこの活動を続けていることが分かる。相談では自分の属する宗派色だけでなく仏教色を出すことも少ない。超宗派で医療現場などで支援活動をする臨床宗教師でもある男性僧侶は「『助けてくれ』と言えることが大事。だが教義から離れたら自分には何が残るのか。ただひたすら寄り添うというのはどういうことか、自分の中にある教えを再構築する必要がある」と考え込む。

他者の死ぬほどの苦悩に向き合う姿勢はどこから来るのか。「相談者の苦しみを自分こそが受け止めなくては、ではなくて、私の後ろにいる仏様が聞いてくださっている」とうなずく若い僧侶の姿が印象的だった。「私に人を変えるような力はないが、たまたま頂いた手紙から何を受け取り、そこから縁に恵まれるかどうかです。それを祈り、阿弥陀様の声を聞きながら返事を書いているのです。『そうか、そうか』という仏の声を」

(北村敏泰)

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