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自死遺族の苦悩③ 特別視するのはやめてほしい

母親は手首にいつも数珠を着けている 母親は手首にいつも数珠を着けている

遺族にとって、自死者への周囲の無理解や心ない言葉、好奇な視線は心に突き刺さるとげだ。いつまでも周りの目におびえ続ける。長男を亡くした森田敦子さんは今も、初対面の人から「お子さんは何人ですか?」と問われると、答えるのがつらい。

残された弟が皆に「一人っ子」と話しているのを後から聞き、大きなショックだった。だが自身も「一人です」と言うことが多い。長男をいなかったことにする自分が許せず、苦しい。遺族の集いなどでは「二人って言えばいいのよ」と励まされるが、そう言うと次には、兄は何歳で何をしているのかと聞かれ、答えられない。「一人と言う方が楽なのです」

三女が自死した藤山房江さんは、姉たちが「二人姉妹」と言っていたことから、「なぜ? 妹の存在を消すなんて、耐えられない」と涙ながらのけんかになった。だが長女も次女も「私らも苦しいのよ」と泣いた。現実に結婚を控え、相手に打ち明けるかどうか気持ちの整理はつかない。「人間は誰でも死ぬのに、なぜ死に方で差別されるのですか」。房江さんは「自殺」という言葉は絶対に嫌だと言う。「誰も傷つけていないのに」。敦子さんも「自死でも、病死でも事故死でも、大変だったね、よく頑張ったねって言えばいいのに、自死と聞いた途端に特別視される。人の死に普通に掛ける言葉が掛けられないから避けるんでしょう」と訴える。

支援団体でも話題になったが、最近はその「世間の目」がインターネットという場で暴力性をむき出しにすることがある。前川裕美子さん(52)は8年前、10代半ばの娘が学校帰りに飛び降りて自死した。家族も学校も兆候はつかんでいなかったが、一人の親友にだけは「私みたいな役に立たない人間は死なないと駄目」と話していた。だがネットを含めて、原因は虐待だとか友人との不仲、いじめだとか無責任な憶測が広がった。

裕美子さんは「自死は恥、と特別視するのはやめてほしい。がんや交通事故で亡くなった人と同じように扱ってほしい」と話し、事情を知らない人に尋ねられると、「娘はうつ病で死んだ」と言うことにしている。

周囲の目、理解不足から来る痛みは、当事者にしか分からないようなこともある。敦子さんは「国や行政の自死対策キャンペーンで、『自殺は防げる』って言われるけど、責められている気がします」と告白する。

標語などで「自死願望のサインを見逃さない」「誰かが止められる」と呼び掛けられると、「自分のことか。止められなかった私は最低だ、と苦しみがフラッシュバックします」。“前兆”として、眠れない、口数が減るなどが挙げられるが、裕美子さんは「確かに分からなかったけど、娘が死ぬ前の様子は、口をききたくないとか思春期では普通にあるようなこと。どうやってサインと見分けるのか教えてほしい」と苦渋の表情で訴えた。

敦子さんも「一緒に住んでいて3時間前に話をした母親の私でも、息子の自死の決意に気付けなかったんです。一体どうすれば良かったんですか」と口にする。答えのない問いは、遺族にさらなる重圧となってのし掛かる。中部地方の鉄道駅に張られた「STOP自殺」のポスター。「鉄道での自殺は、大切な命が失われるだけでなく、鉄道を利用する多くのひとの安全や暮らしに関わってきます」とのフレーズが遺族を追い込むとして論議になった。家族を自死で亡くした人たちの心は、それほどもろいのだ。

(北村敏泰)

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