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「助け」に関わる宗教の機能 地域に新しいつながり生む

大阪大教授 稲場圭信氏

時事評論2018年10月26日 16時50分

近年頻発する大災害時のみならず平常時の支え合いでも、自助・共助・公助が大切という認識は広がっている。地域の支え合いの仕組み、地域包括ケアシステムがうまく機能するためには誰が誰を「助ける」のかを明確にし、さらには「助け合い」の意識を醸成することが大事だとされる。

「助ける」は他動詞で、誰かが誰かを「助ける」ということになる。「助けて」もらった受け手としては、「助かる」(自動詞)ことになるわけだが、直接的な誰かれではなく、おかげさまで「助かった」ということも多い。この「助ける」と宗教の関係を改めて考えてみたい。

信心深くなく、特定の信仰をもたなくても、おかげさまで「助かった」と言葉に出して言う人は多い。しかし、そういった日常的なことを超えて教義にもとづいた救い、すなわち天国や極楽浄土などの究極的「助かり」、すなわち「救済」が存在するのが宗教である。宗教の「助ける」という機能に着目すると、お守り、救い、天国、来世、あの世などこの世における死の後の世界での救済などが思いつく。宗教の究極的な存在、創造主、神、仏が「助ける」のか。あるいは宗教的教義、教えが「助け」となり、その教えにそって生きることで「助かる」のか。

身近な「助かる」に、身体お守りがある。交通安全を祈願するために神社に参拝する人も多い。これらは予防的意味合いをもつが、特定の課題に対して「助け」を求めることもある。「苦しい時の神頼み」がそれだ。闘病平癒の祈願や合格祈願などである。

また近年、坐禅、瞑想などの宗教的実践を使って心を整えるノウハウや、癒やしを教える書籍やセミナーがある。癒やしは精神的な面での「助かり」と言える。それは、人間存在を身体的な部分と心の部分を合わせた全体でみることにつながっている。例えば、ホスピスにおいてはスピリチュアルケアといった人間存在の全体に対する眼差しがある。さらに、この世においてのみならず、死後の世界、来世での救済という宗教的な世界に接続される。

一方、一般人と同様の「助ける」行為を宗教者がしている場合もある。特に、東日本大震災やそれ以後の様々な災害における宗教者の支援活動が一般に知られるようになった。また、寺院や神社といった宗教施設が小学校や公民館のように災害時に避難所となって人を助けている。

人々のつながりが弱体化した社会で新しいつながりを作り出すために、近年、宗教施設が宗教関係外にも活動を広げながら、地域をつなぐ拠点として新たな機能をもった存在へと変化した事例がある。例えば、宗教施設の境内でのオープンテラス・カフェ、高齢者向けの朗読会、子育て支援の集い、また婚活イベントの開催といった地域社会に溶け込んだ形での活動だ。宗教施設が地域住民の様々な「助かり」になっている。

改めて宗教を「助ける」という観点からみると、宗教は自分が「助かる」こと、そして他者を「助ける」ことと関係しており、多様な機能を有していることがわかる。今後、地域の自助・共助・公助に宗教はどのように関わってゆくか。その展開に期待したい。

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