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ハロウィーン ― 祝祭か暴動か 日常・非日常の境界の消失

東京大准教授 堀江宗正氏

時事評論2018年11月23日 09時34分

10月末のハロウィーンの時期になると、仮装した若者が街や電車の中を徘徊する。そんな光景が日本でも珍しくなくなった。近年では地方にも飛び火し、幼稚園の行事にも取り入れられている。

しかし今年は、仮装した群衆が押し寄せる渋谷で、軽トラックが横転させられ痴漢・盗撮・暴行で2桁の逮捕者が出た。ダイバーシティーを政策に掲げる渋谷区長の長谷部健も「到底許せるものではありません」と声明を出し、規制を検討し始めた。区には禁止を求めるクレームが殺到したという。だが群衆の発生を禁止するのは容易でない。

フランスでは日本と同様ハロウィーンは近年まで祝われていなかった。しかし1年に1日だけあらゆる犯罪が合法になるという設定の映画「パージ」の模倣で今年は暴動がSNSで拡散し、100人以上が逮捕された。日本の場合も仮装や騒ぎを写真で共有するSNSの影響が大きいだろう。

ハロウィーンはもともとケルトの秋の収穫祭に付随する祭りだった。冬に来訪する死霊から身を守るための飾り付け、追放するための儀式から始まったという説がある。精霊に施しをするのは施餓鬼会を思わせる。異形の来訪者に帰ってもらうための儀礼という点では豆まきやなまはげなどを思わせる。民俗学者の畑中章宏は、死者に扮し、霊を鎮めるハロウィーンに日本の芸能を重ねている。

近年は子どもを怖がらせるなというクレームがあり、宿題を教えるなまはげや、子どもと仲直りをする鬼が話題となった。刺激的な風習がクレームによって抑圧される現代日本で、ハロウィーンが若者のエネルギーのはけ口になっているという見方もある。

祝祭の歴史を調べてきた堀井憲一郎は、反キリスト教的な精霊信仰はクリスマスより日本に合い、秋祭りのなくなった都市に自然発生的な祝祭空間が増えるのは良いという。

ハロウィーンはアメリカに渡ると商業化した。ホラー映画の影響で本格的仮装が始まり、大人の祭りに発展する。今年の総支出額は1兆円超になるという。日本でも市場規模が1300億円を超えた。もはや簡単に禁止できるものではない。渋谷の場合も、禁止するより徹底した商業化による解決が提案されている。

死者表象というより広い観点から見直してみよう。近代社会で地獄信仰が衰退することは統計的にも確認されている。2000年代からのスピリチュアル・ブームでは霊の恐怖をあおる旧来の霊能者が批判され、死者は生者と変わらず、愛をもって関わり続ける存在だと強調された。映画化された『黄泉がえり』や『ツナグ』などでもそのような死者像が描かれる。

この傾向は東日本大震災後も続くが、並行してゾンビ的なイメージも隆盛を見せていた。死者を綺麗に描くか、醜く描くか。真逆のように見えるが、実はどちらも死者と生者の境界をぼかす試みである。地獄で死者が罰を受けているというイメージを否定して、現世に引きつけ、飼い慣らしているとみられる。

だが、日常と非日常の境界の消失は思わぬ事態を招く。フランスの暴動のような深刻な事態を避けるための知恵が必要である。

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