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秋篠宮さま発言が投じた問い 「成長教」の呪縛からの脱出

北海道大名誉教授 土屋博氏

時事評論2019年1月25日 10時35分

日本漢字能力検定協会が年末の恒例で全国から募集した2018年の「今年の漢字」は、「災」が最多得票をかちとった。これは直接には、地震・豪雨・台風・猛暑等の自然災害のことであるが、今回は明らかに人災も含まれる。それを察知した向きからは、「転」や「成」が主張されたが、少し視点をずらせば、これらも人災と結びつく。さらにそれは、一種の宗教としての「成長教」の呪縛に行きつく。

政府は原発を輸出し、巨額の装備購入を図る防衛大綱を決定し、五輪や万博を誘致して企業の活性化をもくろむ。しかし今やそれらは次々に破綻を示しつつある。原発輸出は行き詰まり、さまざまな資金調達の見通しも立たず、国会は空洞化している。トランプ米大統領の政策は世界を混乱させているが、それを修復する能力は、国民に「寄り添い」日本を動かしているつもりの人々には元来備わっていない。巨視的に人間の将来を見据えうるような新しいエネルギーはどこから現れるであろうか。

昨年11月に53歳の誕生日を迎えるに当たっての記者会見で、大嘗祭への公費支出をめぐって語った秋篠宮さま発言は、大嘗祭という具体的問題を越えて、「宗教」について改めて考え直すための巨視的な地平を開いたのではないかと思われる。いろいろと批判もあり、問題を伏せようとする動きもあるが、皇族と政治との関係などに矮小化すべきではなく、広く公の場で論議されなければならない。特に宗教関係者にとっては、自らに関わる重要な問いかけであろう。

この発言は、天皇の退位に当たってのご意向を踏まえており、立場上ぎりぎり最後の機会と考えられたと思われる。これまで「災」の現場を繰り返し訪れ、被害者の目線で語りかけられた天皇ご夫妻の姿勢は、自らも関わる出費をできる限り抑えようとする秋篠宮さま発言に通ずる。そもそも政教分離の一般原則からすれば、発言内容は特別なものではなく、常識の範囲内に属する。

これを機会に「宗教」関係者も、改めて自らを取り巻く状況の変化を広い視野から考え直すべきである。既存の教団専従者は組織を守る姿勢を保持するのが普通であるが、それぞれの生活の現場に生きる一般の信徒たちは熱心であればあるほど、「場」の要請に良心的に対応する。それは必ずしも既存の教団形態を守る方向に向かうとは限らない。教団専従者も、生活を変える覚悟をもってそれに対応できれば、数の上では縮小してもそこから新しい可能性も開けるであろう。

世界の諸宗教は、自らの歴史を踏まえながら様々な変化を遂げつつあるが、日本の宗教事情も徐々に変わろうとしている。これは善し悪しの問題ではなく、冷厳な事実として真摯に受け止められねばならない。秋篠宮さま発言は、人々との接触から天皇が感じ取られたこの変化を受け止めたところからなされただけに、大嘗祭問題に限定できない。現在既存の宗教団体に属する人も属さない人も同じ問いに直面する。無所属は栄誉ある「中立」を意味しない。今や宗教団体所属の有無を問わず、同じ「宗教的」な問題と取り組む時代になったのではないか。

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