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米国で「無宗教」がトップに 宗教の政治的影響力、逆に増す?

東京大准教授 堀江宗正氏

時事評論2019年4月26日 11時17分

CNNが「『無宗教』の米国人、カトリック教徒などと並んで最多に」という記事を発表し、話題を呼んだ(4月14日)。44年にわたって続けられている米国の総合的社会調査の最新結果の分析による。90年代に最も多い宗教グループは福音派で、今世紀はカトリックとトップ争いをしてきた。だが僅差ではあるものの「無宗教」がトップとなったのだ(23・1%)。

「アメリカで無宗教だと言うと白い目で見られると教わったが変わったものだ」というのが日本のネットの反応で目立った。だがこれは「無神論」と混同している可能性もある。無神論者はムスリムや同性愛者以上に米国社会にふさわしくないと思われており、今なお差別されている(Edgell他、2006)。「無宗教」は無神論とは限らない。教団に属さないが個人的に宗教的な人も含みうる。

米国では保守的な福音派に比べてリベラルなプロテスタント主流派が減少し続けている。80年代初頭までは文字通り主流派で、3割近くを占めていた。だが最近の調査では10%前半である。つまり、この主流派が教会に所属しない無宗教に転じたと見られる。

保守派のコラムニストであるスタントンは宗教社会学を参照しながら、かつて教会に通わないが教派を聞かれれば「家族の宗教」を回答していた人が、今日では無所属と答えているだけだとする(The Federalist,April 24)。まるで「家の宗教は仏教」と答える日本の「無宗教」者のようだ。だが日本の無宗教者は所属ではなく、宗教的信仰の有無を尋ねた結果ノーと答えた人たちである。

そこで最新の世界価値観調査のオンライン分析で公平に比較してみた。「宗教または宗教的教派に属すとしたら何ですか」という質問に、米国では34%が無宗教、25%がプロテスタント、22%がカトリックと答えた。日本では57%が無宗教、39%が仏教と答えた。6対4で「日本人は無宗教」と断定するのは無理がある。6割の無宗教も怪しい。堀江宗正編『現代日本の宗教事情』(岩波書店)の序論「変わり続ける宗教/無宗教」は、日本で非宗教とされてきたものとして神道行事、葬式仏教、民間信仰・スピリチュアリティをあげる。これらに関与する人も「無宗教」と答えている可能性がある。

CNNの記事の英語版には無宗教者を代弁する政治家がいないとする意見も紹介されていた。日本ではどうか。政権与党のうち公明党の支持基盤が創価学会なのは知られている。自民党は神道との関わりが深い。鈴木エイト「政界宗教汚染~安倍政権と問題教団の歪な共存関係」(ハーバー・ビジネス・オンライン)は統一教会との長く深い関係を跡づけている。最近刊行された堀江宗正編『宗教と社会の戦後史』(東京大学出版会)で、伊達聖伸は、低投票率が教団の政治的影響力を押し上げたとする。

宗教の政治参加は政教分離と矛盾しない。だが日本ではタブー視されている感がある。米国では両立可能と見られている。だが特定宗教が政治的影響力を行使しないか常にチェックされる。このような姿勢は米国以上に「無宗教」者の多い日本でこそ必要だ。それは政治と宗教の健全な関係にもつながるだろう。

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