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頻発する自然災害への備え 宗教者ボランティアに期待

大阪大教授 稲場圭信氏

時事評論2019年6月14日 13時03分

元号が改まった。令和の時代の幕開けに平和を願う人も多いだろう。では、平成はどのような時代だったか。平成元年は世界的にも見て天安門事件、ベルリンの壁崩壊、米ソ冷戦の終結宣言など歴史的出来事があり、時代の転換期だった。日本ではバブル経済が崩壊し、失われた20年に突入していった。グローバリゼーション、新自由主義、自己責任論、格差社会、アベノミクスといった言葉が日本社会に流布した。

世界ではテロリズムが頻発し、EUにおける多文化共生の危機、自国第一主義の風潮が広まった。一方、平成の30年間、国内は戦争のない時代であった。その意味で平和だったと言えるが、大規模自然災害が頻発した時代でもある。

平成の前半は雲仙普賢岳火砕流、奥尻島地震、阪神・淡路大震災があった。阪神・淡路大震災では多くのボランティアが活動し、1995年はボランティア元年と呼ばれた。被災者のニーズに応じて効率的にボランティアが活動できるように、被災地に社会福祉協議会による災害ボランティアセンターが設置されるようになった。98年には特定非営利活動促進法(NPO法)が施行された。

21世紀に入っても新潟県中越地震や新潟県中越沖地震等が発生し、平成の後半には新燃岳噴火、そして、平成23年3月11日、東日本大震災が発生した。この時、宗教者の対応は迅速であった。現地へ先遣隊を送り、宗教界全体が安否確認・救援活動へと動いた。被災地では多くの宗教施設が緊急避難所となった。その後、自治体と宗教施設の災害協定の締結が増加した。被災者支援をする宗教者の中から立ち上がってきた臨床宗教師の取り組みもある。災害時の経験をもとに平常時も含めた寄り添い活動に関わっている。

宗教者の災害への取り組みが進む中、平成28年熊本地震の際には、社会福祉協議会及び災害ボランティアセンターと宗教者の連携がより一層深まった。昨年は大阪府北部地震、西日本豪雨、台風21号、北海道胆振東部地震など大災害が頻発した。宗教施設が緊急避難所となり、多くの宗教者が支援活動を展開した。

大災害時に市役所などの行政施設がインフラごと被災する。そこで、市民団体に加え行政を含めた連携組織「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク」も設立された。カリタスジャパン、救世軍、SeRV、ヘルピングハンズなどの宗教・関連団体が参画している。ボランティアは行政が対応しきれない部分で活動し、状況に応じて時には行政に協力する補完的な動きともなっている。宗教者による災害時の支援活動もその一つとなっている。

令和の時代、残念ながら南海トラフ巨大地震が発生する可能性は極めて高い。政府の中央防災会議は5月31日、南海トラフ巨大地震の防災対策推進基本計画を修正し、約32万人としていた死者数は、住民意識や耐震化率の向上で約3割減の23万人と推計した。しかし、このような大災害が発生すれば行政の力だけでは足りない。宗教者の災害ボランティア活動、宗教施設の避難所運営は社会的要請でもある。世のため人のため、防災・減災対策の一層の充実を期待する。

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