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代替わりと政教分離クライシス 論点は公費支出以外にも

東京大准教授 堀江宗正氏

時事評論2019年7月26日 13時10分

明仁上皇の退位の思いをにじませるビデオメッセージを受けて、新元号発表、退位と即位に関わる一連の代替わり儀式がおこなわれた。10月には即位礼正殿の儀、11月には大嘗祭が予定されている。

平成の代替わりでは、特にこの大嘗祭をめぐり、政教分離原則に抵触するのではないかという議論が起こった。しかし今回は議論が低調である。原因としては前回の大嘗祭における知事参列への公費支出をめぐる裁判で最高裁が示した判断が大きい。「社会儀礼を尽くすもので政教分離には反しない」というものだが、政府はそれを根拠に前例踏襲の姿勢をとっている。

一方、大阪高裁では「政教分離規定に違反するのではないかとの疑義は一概には否定できない」という判断も示されている。昨年には秋篠宮が「宗教色が強いものを国費で賄うことが適当かどうか」と疑問を投げかけた。また、キリスト教の牧師や市民が大嘗祭の公費支出差し止めを求める訴訟を起こしたが、今年2月に東京地裁は弁論さえ開かずに訴えを却下した。

注意しなければならないのは、公費支出だけが、そして大嘗祭だけが、一連の代替わり儀式の憲法違反の論点ではないということだ。そして、前述の最高裁の判断だけで、議論に終止符が打たれたわけでもないということである。

平成最後の日である4月30日には、プロテスタントからカトリックに至るキリスト教系の団体から、エキュメニカルと言ってもよい反対声明が出された。そこでは、一連の儀式を国事行為・公的行事としておこなうことが、政教分離だけでなく、国民主権の基本原理にも違反すること、国家神道の復活につながることも指摘された。宗教学者の島薗進はさらに踏み込んで、国民の信教の自由との不整合を指摘している(東京新聞、5月2日)。

しかし、キリスト教以外の教団や一部の宗教学者以外からは反対意見は表明されていない。それどころか本紙でも多くの紙面が割かれ、既成仏教を含む多数の教団が祝意を表している。

このような状況を受け、本欄では何回かに分けて、代替わり儀式と政教分離の問題を広く取り上げたい。論点は儀式や知事参列への公費支出にとどまらない。政権による政治利用やメディアによる祝意の強制など多岐にわたる。裁判所の判断ではカバーされない「政教分離クライシス」と呼ぶべき事態が生じている。

筆者の問題提起は次のようなものである。明治期の「創られた伝統」(旧皇室典範と登極令による)が現憲法と矛盾するのにもかかわらず、国民の無関心ゆえに議論を経ず代替わり儀式に導入された。これが祭政一致の様相を呈している。それだけでなく、天皇の「象徴」するものが「平和と平安」から「武力による支配」にすり替えられつつある。原因は内閣による儀式の合法的支配にある。憲法では皇室に関わる事柄を内閣がコントロールできるよう規定されている。「政治の宗教化」という新たな政教分離クライシスには法的な歯止めがきかない。天皇の権力を抑制するための仕組みが内閣の儀式への影響力を最大化している。

次回から、より具体的な論点について紹介したい。

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