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トゥーンベリさんの怒り 気候変動、「無策」から「行動」へ

大阪大教授 稲場圭信氏

時事評論2019年10月11日

ニューヨークで9月23日に開催された国連気候行動サミット2019に出席した16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんは、地球温暖化に本気で取り組んでいないと世界の指導者たちを痛烈に批判、「行動」を求める情熱的なスピーチを行った。怒りの表情と訴えに共感する人たちも多いが、一方で、気候変動の影響を軽視する人たちから科学的根拠のない妄信とか、彼女が精神的な疾患を持っているからと批判する声も残念ながらある。

18年8月、気候変動に対する各国の無策に抗議しトゥーンベリさんが始めた金曜日の学校ストライキ、スウェーデン国会前に座り込む「行動」はSNSで「#Fridays For Future」というムーヴメントに発展、世界に広がり、19年9月20日には世界で400万人以上が参加したとされる。

前記サミットでトゥーンベリさんは、「あなたたちは私たちを失望させている。しかし、若い世代はあなたたちの裏切りに気づき始めています。未来の世代の目は、あなたたちに向けられている。もしあなたたちが裏切ることを選ぶのであれば、私たちは決して許しません」と先進国指導者らに「行動」を呼びかけた。この若い世代が数年後には投票権を持ち、気候変動に対する行動を起こさない政治家に圧力をかける。彼女に共感する若者の「行動」に政治家、世界の指導者たちはどう応えるのか。

トゥーンベリさんは両親に、菜食主義になり、飛行機搭乗を止め、カーボンフットプリントに取り組むことを強いた。強い信念のない筆者にはとてもできないことだ。では、どうしたらよいか。国連気候変動枠組条約締約国会議(COP24)は、パリ協定の運用ルールを何とか合意したが、実質的に世界各国に行動を求められるのか。日本では昨年夏の西日本豪雨、災害級猛暑や台風21号、今年も8月28日に発生した九州北部豪雨や台風15号の被害がある。世界的に気象災害が頻発している。

記録的異常気象の背景には地球温暖化があり、今後も同様の現象が増加するという科学的見立てがある。温室効果ガス排出削減が必要なことは誰もが同意するだろう。問題はその時期だ。世界のCO₂排出量は削減どころか、再び増加している(Global Carbon Budget 2018)。国別の目標には、企業活動、経済とのトレードオフの関係もあり実現は困難だ。技術と社会のイノベーションで変革は可能か。国益を超えるJapan Climate Initiative “We are still in” Global Climate Action Summitなど、世界の非国家アクターの動きにも期待したい。

1992年、リオデジャネイロの環境サミットで、12歳の少女セヴァン・スズキさんは語り始めた。「太陽のもとにでるのが私は怖い。オゾン層に穴があいたから……。こんな大変なことが、ものすごいいきおいで起こっているのに、私たち人間ときたら、まるでまだまだ余裕があるようなのんきな顔をしています」。あれから27年。問題の深刻さは増している。次世代の若者に押し付けるのか。筆者には高校生と中学生の娘がいる。どう応えるか。簡単な処方箋はない。自分自身に問い続けている。

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