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大嘗祭の核心は秘儀に 公的行事にふさわしくない

東京大准教授 堀江宗正氏

時事評論2019年11月22日 14時57分

14日から15日にかけて大嘗祭が執り行われた。平成の時は公費支出が政教分離原則に抵触しないかが議論された。だが今回は政府が前例踏襲を貫き、議論させない構えを見せた。その前例踏襲の根拠である伝統的性格は疑問視される。

東京新聞14日社説は、奈良時代には床さえなく、約220年中断し、復活後も高床式の素朴なもので、大規模化は明治以降だと指摘する。貴族院書記官長として大正天皇の大嘗祭に仕えた柳田國男は、古式を保存し装飾を取り除くべきとした。秋篠宮も国費で賄うことに疑問を示したが、結局は総額24億円余が投入された。保守寄りの日本経済新聞(16日)でも、井上亮が柳田と秋篠宮を引き、歴史的考察を含め真剣に議論すべきだとする。

対して読売新聞は政府と同一見解の学者を主に紹介する。須賀博志(同紙7日)は、国民のために祈る行為は公的行為で、宮中祭祀を私的行為とするのは国民の実感と距離があるという。政教一致に近い感覚だ。八木晃介(毎日10/12)は1989年の閣議了解が、宗教性を否定できず国事行為とはできないとしながら、公的性格があるので宮廷費から支出するとしたこと自体が支離滅裂だとした。日経社説(11/16)は、政府が「公的性格」を強調するのなら儀式内容や意義、予算の使途など情報公開すべきだと主張する。

その肝心の中身が秘儀・秘事なのが大嘗祭問題の核心だ。「神座・寝座」が敷かれ、天皇は一夜を明かし、神に奉仕するが、詳細は秘密である。昭和天皇の大嘗祭(1928)の時の折口信夫の講演「大嘗祭の本義」では、寝座の布にくるまり、神と一体化するという説が唱えられた。これが平成の時に注目された。当時と同様に今回も岡田荘司は、折口の仮説にすぎず、戦後に過大評価されたと退ける(朝日11/13)。だが宮地正人によれば、同じく昭和の時に宮内省が「大礼本義」で「皇祖の霊徳を肉体的にお承けになる」とし、文部省が「国体の本義」(37年)で「祭祀によつて皇祖皇宗と御一体」とし、教科書「初等科修身 四」の「大嘗祭の御儀」で「大神と天皇とが御一体におなりあそばす御神事」としている。敗戦まで大嘗祭は現御神の根拠だった(朝日前掲)。それは折口個人の説ではなく、国家が天皇の支配を正当化するための説だった。

今回も衆院議員細野豪志が「神々との対話を通じて、陛下は超越した神秘的な存在になられるのだろう。そして陛下の存在[そ]のものが国家の正統性の根拠となる」とツイート(14日)。中島三千男(読売11/6)は、即位儀式は必要だが戦前の感覚のまま無条件に受け入れてはいけないと述べた。島薗進(日経11/7)は分かりにくい皇室祭祀を民主主義に沿うものにと明快に訴えた。

前出の井上亮は、造酒童女など大嘗祭から消えた伝統は多い、象徴天皇らしい形を議論するべきと主張。秘儀を介助する采女の廃絶を暗示する。古代、采女は豪族の娘、造酒童女は郡司の娘だった。大澤真幸(朝日5/18)は女性原理の重視とするが、女性を人質とする地方支配形態を残す「秘儀」は、現代の公的行事にふさわしくない。

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