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ポスト・コロナの地球意識 消費抑制は温暖化阻めるか

東京大教授 堀江宗正氏

時事評論2020年5月29日 13時01分

コロナ危機と環境については多くの記事・論説が出ている。東京新聞の社説は、コロナ禍による非常事態宣言以前に、「気候非常事態宣言」が出ていたと指摘する(4/29)。複数の国家、自治体、大学、それにローマ教皇も宣言を出した。日本の記録的暖冬もオーストラリアの森林火災と連動していた。

温暖化との関係も複雑だ。熱帯に適した感染症が北上するだけではない。長崎大の山本太郎によれば、温暖化と開発によって野生動物の生息域が狭まり、人との接触が増えた結果、新興感染症が起きているという。またコロナ危機による経済活動の抑制は、温暖化の抑制につながる。ビロル国際エネルギー機関事務局長は、サステイナブルな投資が増えると期待する。対して、有馬純は、気候変動対策のコストを経済的苦境にあえぐ各国が引き受けるのは難しいと指摘する。

ポスト・コロナの世界はこのまま消費抑制に向かうのか、反動で消費爆発に向かうのか。昨今の中国は後者だが、感染の再拡大が懸念される。前出の山本は、ウイルスは撲滅できず、共生しかないという。東京での抗体検査は陽性率が0・6%しかいなかった。抗体保持者から経済復帰するというわけにいかない。感染覚悟の経済再開となる。感染しても抗体ができにくいのなら、再感染の可能性がある。このパンデミックは大きな波ではなく、都市単位で第n波を短い周期で起こし、経済の長期的抑制と再編をもたらすだろう。

産業革命後の働き方は、1カ所で大勢の労働者が管理されながら働くものだったが、コロナ後はテレワークが一気に拡大した。広井良典はこれを機に地方分散と地域循環の経済にシフトするよう訴える。大都市集住の緩和は、災害リスクの軽減にもつながる。

過去の感染症は、都市集住と関連していた。それは感染者を疫神に取り憑かれた悪しき存在として排除する宗教的態度と、病み苦しむ人に手を差し伸べ、救済する宗教的態度の2種類を育んだ。医学が進歩すると、信仰治療は不要になる。宗教による非科学的な対処が感染を広げる例が今回も複数報告されている。感染拡大が懸念される後進国で信者を抱える宗教は、適切な予防策を指導し、死者を断罪せず、遺族に寄り添う姿勢が求められる。

科学に対抗して集会を断行する宗教は狂信的として支持を失いつつある。逆に祈りに関するネット検索が急増し、オンライン礼拝・伝道が米国では盛んだ。国連は自宅待機中の職員に瞑想をすすめた。ニューズウィーク誌のD・ファーリーは不透明さを受け入れる仏教に注目しコロナ後は世界観が変わると予測する。自宅待機者はスピリチュアリティへの関心を深めうる。

コロナ危機は人の移動を抑制するが、各国共通の苦難は全人類の連帯感や地球意識を強めるかもしれない。英国のブラウン元首相は世界政府樹立を呼びかけた。科学と政治が一体化し、市民は両者に服従せざるをえないが、不信も抱いている。不安に乗じて非科学的な治療や陰謀論を説くのではなく、科学と共存しつつ、政治と一線を画するリベラルで理性的なスピリチュアリティが存在感を増すに違いない。

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