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安心安全の地域づくりへ 分散避難で貢献する寺社

大阪大教授 稲場圭信氏

時事評論2020年9月11日 13時11分

長引く厳しい残暑の中、7月豪雨被災地では、コロナ禍にあって限られた人手で復旧作業が行われた。そこに今度は台風9号、10号が連続して襲来した。

史上最強クラスと予想された台風10号は、九州に近づくにつれて予想よりも勢力が落ちたものの、9月6日夜、鹿児島県枕崎市の西を北上時には中心気圧945ヘクトパスカル、最大瞬間風速60メートル。暴風雨をもたらした。九州電力によると7日には最大47万戸を超える停電が発生した。8日現在、死者2人、行方不明者4人、100人を超す重軽傷者が出た。

今回、気象庁と国土交通省は台風が近づく早い段階で会見を繰り返し、避難を促した。そして、事前に避難所開設という動きがあった。各避難所は新型コロナウィルス感染症拡大予防のために収容人数を減らしており、定員に達して受け入れができなくなった避難所は九州と山口県の116市町村で500カ所以上にのぼった(NHK:9月7日20時)。一方で、九州の各地で宗教施設が自主的に避難者を受け入れた。その多くが避難所指定されていない宗教施設であった。

5月のはじめ、新型コロナウィルス感染対応で予断を許さない状況が続く中、日本の地震学会、気象学会、自然災害学会、社会学会などが加盟する防災学術連携体の幹事会が、感染症への対策を進めつつ、自然災害の発生による複合災害にも警戒が必要であるとの緊急メッセージを発表した。筆者は、分散避難として宗教施設との連携を呼びかけていた。この時にすでに行政は動いていた。

愛知県岡崎市は、行政からの働きかけで岡崎市仏教会と災害時協定に動いている。新型コロナウィルス感染対策で、できるだけ多くの避難所確保を迫られていた市役所防災課が4月から寺院の利用の検討を始めていた(NHK:7月25日)。

7月17日、長野市と市内7寺院が避難所としての活用の協定を締結した。8月19日には、高知市が市内の2カ所の寺社と南海トラフ地震発生後に避難所として施設を活用する協定を締結。さらに8月20日、愛知県瀬戸市と市内14カ寺が、寺院施設を一時的な避難場所として災害時に使用する協定を締結した。筆者らの調査では、愛知県で58の宗教施設が行政と何らかの形で災害時協力があることがわかっている。

9月3日には、長崎県佐世保市と佐世保仏教連合会は、災害時に連合会員の16寺院施設を一時的な自主運営避難所として利用できる覚書を締結した。朝長則男市長は「大変心強い。市民にとって、慣れ親しんだ場所に避難できるのはありがたい」、連合会の高木龍法会長は「みなさんの安心の備えができたら」と話した(長崎新聞:9月4日)。

自分の住んでいる地域をよく知って、地域住民が地域防災を考えることも必要だ。災害対応における施設の活用では寺社等宗教施設も含まれる。コロナ禍にあって、今後ますます分散避難は重要になる。時代の要請である。この動きに対応しない市町村は、地域住民の命を守ることができない。やれ地域創生だ、やれ観光資源だという声もあるが、それにも取り組みつつ、地道な安心安全の地域づくりが大切だ。

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