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新たな精神的感染症 「トランプ支持者」の陰謀論

東京大教授 堀江宗正氏

時事評論2020年9月25日 10時27分

新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」)は、身体症状だけでなく精神的感染症をも引き起こす。半年前の時評欄では兵器説と反中差別感情との関連を取り上げ、注意をうながした。その後、差別は外国人や「夜の街」だけでなく、医療関係者にまで広がった。韓国では教会がクラスター感染の場として繰り返し取り上げられている。その一つ新天地イエス教会は、2月段階で自らも被害者だと訴えた。その後、指導者は逮捕され、自治体は教団に対し、約90億円の賠償を求めた。韓国に限らず、宗教人口が一定程度ある地域では、宗教が感染爆発の引き金になると同時に、一般社会から被害者ではなく、加害者として差別される構造ができやすい。

一方の兵器説だが、さすがに中国人の犠牲を説明できず不合理である。だがトーンダウンした流出説をトランプ大統領が用いて中国の責任を追及し始めた。これは兵器説を暗に匂わせる効果もある。背景にあるのは、死者数が東アジア各国で少なく、欧米で多いことである。中国発のウイルスで欧米人が犠牲になっていることが兵器説・流出説がくすぶる原因だろう。しかし英国ではアジア系の致死率が黒人とともに高いというイングランド公衆衛生庁の報告がある。人種より生活環境や貧困が致死率を左右しているということだ。

陰謀論と関連して急拡大した精神的感染症はコロナ否認である。これは「コロナはただの風邪」などとして被害を認めないというものである。日本では、都知事選に立候補した平塚正幸が広め、マスクを付けない「クラスターデモ」や山手線一周をおこなった。

コロナはワクチン産業による捏造だという陰謀論もこの否認論と結びついている。マイクロソフト社の創始者であるビル・ゲイツは米国の感染症対策を批判し、自身の慈善財団を通じ、ワクチン開発に巨額を投じた。これが仇となり、利益目的とされるだけでなく、マイクロチップを埋め込み、世界支配を企んでいるという陰謀論に発展した。Yahoo News/YouGov調査によると共和党支持者に広まっているという。流出説・兵器説と否認論は矛盾するが(ただの風邪なら被害を出さない)、トランプ支持者と結びついて意図的に発信されている。

平和博によれば、彼ら陰謀論者は、トランプを陥れようとする闇の政府の一人とされるマフィアの射殺など、コロナ前からテロ事件を引き起こしてきた。ツイッターとフェイスブックは、陰謀論アカウントの大規模削除に至った。真鍋厚は「パニックに陥った世界全体を嘲笑することができるステージへと素早く上昇し、悪意のある何者かによる陰謀というハリウッド映画さながらのドラマティックな物語性を生きることができる」と分析している。アンドレ・ガニエは、トランプ支持の宗教右翼の指導者が恐怖と悪霊を結びつけ否認論を導いたとする。

コロナ否認は確実に感染症を拡大させるだろう。米国では密集した居住区で医療アクセスが限られている黒人層での致死率が白人の2倍である。白人の否認が黒人に実害をもたらすという構造がある。それを解毒するのに、黒人・白人ともに影響力のある宗教指導者が果たす役割は大きい。

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