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宗教行事がネット空間に 新たな意味帯び継承発展

東京工業大教授 弓山達也氏

時事評論2020年10月9日 13時07分

本紙9月25日号に既報だが、神道国際学会で「国難と信仰」という報告をした。その準備で100年前のスペイン風邪禍の初詣やお盆を調べたが、驚いたことに1日に何百人も亡くなったと伝える紙面で賑やかな節分が報じられていた。もちろん当時も学校は全面休校が検討され、公園に出ることも自粛されていた。それにもかかわらず宗教行事は行われていたことの意味を今後問うていきたい。

さてその調査の際に、偶然、「巣鴨の宗教大学で少年少女の魂祭」という大正8年7月14日の『読売新聞』記事を見つけた。魂祭(たままつり)とはお盆のこと。宗教大学とは、浄土宗立の教育機関で、後に大正大学にまとまる三つの大学のうちの一つだ。そこで学生による児童研究会が主催して望月信亨学長らの読経と講話、お盆の歌の斉唱などを行い、晴着の子どもたち500人が集まったという。

前年秋からこの年の冬にかけてスペイン風邪第1波が猛威を振るい、やがて翌年にかけての第2波が到来する目前である。子ども対象の行事を始める背景には宗教教育の意図もあったらしく、若き学僧たちの志の高さがうかがわれる。

筆者は大正大学に長く勤務し、東日本大震災の年に、かつてあったという「みたま祭り」を同僚らと復活させた。いつ始まったか判らず、戦後間もない頃の盆踊りの櫓の周りを大勢の人が取り囲んでいる写真が1枚と、昭和40年代に中止となった云々という伝承だけがあった。同僚が学生と学報等を調べたが、戦時中にはすでに実施されていたという記録はあるものの開始年は謎だった。

「魂祭」と「みたま祭り」との表記上の違いはあるが主催も伝承の通りで、この魂祭がみたま祭り、現在は「鴨台盆踊り」と呼ばれ、2日間で数千人を集める東京城北地区の盆踊りの口火を切る行事の淵源であるのは間違いない。それがスペイン風邪による死の影が忍び寄る中で開始され、多くの子どもたちが集まっていることも興味深い。

では、このお盆の行事はコロナ禍でどう実施されたのか。これも本紙7月22日号に掲載されているが、オンライン開催だったのだ。もちろんスペイン風邪禍で始まったのだから、コロナ禍でもやれなどと妄言を唱えるのではない。2日間でZOOMというインターネット上のコミュニティーで371人が踊り、YouTubeで3千人以上が視聴したこと、そして筆者もオンラインで参加したが、仏教系大学開催として、単なるイベントではなく、宗教行事としての意味が強調されていたことに、大正期に始まる行事が新しい可能性を示したと考えている。

そもそも宗教とは目に見えない何かを感じさせたり、可視化したりする力を持っている。インターネットも同様で、時に現実をしのぐリアルさを体感させてくれる。問題はそこに誰がどのような意味づけをするかである。流行りのオンライン参拝やバーチャル巡礼は、どう接していいか判らず、今は居心地が悪い。だが大正期の衣鉢を継ぐ行事が宗教行事の意図を汲み、ネット空間で継承発展したように、オンラインの宗教活動は、条件が整えば正当な市民権を得るであろう。

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