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「利益・効率」追求の陥穽 多様性によるイノベーション

大阪大教授 稲場圭信氏

時事評論2020年10月23日 10時32分

日本学術会議の新会員候補6人を首相が任命拒否したことに対し、学問の自由への介入として各学術界から抗議の声明が出ている。「総合的・俯瞰的」という言葉が連呼される状況下、この問題とは別次元であるはずの学術会議のあり方にまで議論が拡大している。

とりわけ任命拒否された候補が人文学・社会科学者であったことから、その社会的かかわりに対しても議論が起きている。しかし、この20年ほどの間、人文学・社会科学の役割については、科学技術・学術審議会や学術会議などで長年にわたる議論があり、各種の提言がなされてきた。

9月2日には、日本学術会議の社会学委員会が「現代社会への応答性を備えた総合的社会理論の振興のために」と題した報告を上梓した。本報告では、社会思想、経済思想、経済哲学、政治思想、政治哲学、社会学理論、社会哲学、社会理論、歴史哲学等々の分野の全体を表現するものとして、「総合的社会理論」という概念を用いている。

近代化の大きな物語が終焉し、「学術研究をどちらに進めたらよいのかという方向性感覚を、多くの研究者が失っているように思われる」現代社会にあって、「何が真理であり」「何が価値あることなのか」という問いに答えるために「総合的社会理論」が重要と指摘している。

日本学術会議の科学と社会委員会が同4日にまとめた報告「学術とSDGsのネクストステップ―社会とともに考えるために」では、社会課題志向や社会との共創を科学技術政策史の観点から巨視的に位置づける一方で、SDGsに不足していると指摘される文化や精神的価値の研究を受け持つ人文学・社会科学からの関与も概観している。

キーワードは共創だ。政府の科学技術政策の基本方針を定めた「第5期科学技術基本計画」にあるSociety 5.0や超スマート社会の構想には文理融合、そして社会の様々なアクターとの共創が必要である。

利益・効率のみを追い求めてきた後期近代の陥穽を根本から問い直す必要性はないか。従来のイノベーションのもとに推進されてきたのは科学技術イノベーション Technology-Driven Innovation(TDI)である。TDIのみで進めばそこに生まれるのはマルクスの言う特別剰余価値であろう。一部の企業、資本家だけが独占して富を得る。そして終わりなき競争は格差社会と分断社会を生み出している。その搾取の構造の推進に人文学・社会科学がおいそれと応じるわけにはいかない。学術の社会貢献の名のもとにからめとられないように、TDIではない、もう一つのイノベーションのあり方はないか。

共に生きる視点からのソーシャル・デザインとして、多様なヒト・モノ・コトとの共生を志向する協働実践、共創によるイノベーションを「多様性に駆動されるイノベーション Diversity-Driven Innovation(DDI)」と命名し、TDIと対抗するわけではないが、TDIとDDIが車の両輪として、よりよい社会を目指す、どちらかに偏って暴走しない、共生を目指す。夢物語であろうか。いな、今がチャンスである。そこにアップデートされた人文学・社会科学2.0の未来もあろう。

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