PR
購読試読
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
第18回「涙骨賞」を募集
PR
第18回「涙骨賞」を募集 翠雲堂

教団の関与目立つトランプ現象 「隠される宗教」に注視必要

東京大教授 堀江宗正氏

時事評論2021年1月29日 10時07分

1月6日、トランプ元大統領の「不正選挙」に抗議せよという呼びかけに応じて、暴徒が米国議会議事堂を襲撃した。バイデン次期大統領就任確定作業の妨害だけでなく、ペンス元副大統領を裏切り者として殺害する計画も判明した。

日本でもネットやデモを通して不正選挙だと訴える人々がいる。江川紹子はこれをオウム真理教事件と重ね合わせ、警戒を呼びかける。「これはもう大統領選挙ではない 善と悪との戦いだ!」というスローガンを江川は紹介し、二元論、陰謀論、現実無視、独裁志向、被害者意識、他責思考、手段を選ばないやり方を「カルト性」と呼び、米国から伝播したと見る。

一方ネヴィン・トンプソンは米国Qアノンなどの陰謀論の単なる伝播でなくJアノンと呼ぶべきで、日本の「カルト」史に根ざした現象だとする。藤倉善郎、安田峰俊、大袈裟太郎らの観察も含めてまとめると、幸福の科学と日本サンクチュアリ協会(統一教会の分派)、中国政府から弾圧されている法輪功、新中国連邦などの反体制中国人が合流している。彼らをつなぐのは反共産主義である。

筆者の観察では、同じく反共姿勢が強い「生長の家政治連合掲示板」もトランプ支持を鮮明に掲げている。熱心にトランプ支持を表明しているアカウントには、日の丸や鳥居のマークが散見され、神道との関係も示唆される。鳥海不二夫は、不正選挙ツイートの半数が5%のアカウントから拡散したとする。少数の情報源から仕掛けられた組織運動の可能性が高い。アントン・アビロフらによれば、「不正選挙」拡散アカウントの一翼を日本人が構成している。もっとも拡散したのは我那覇真子で、父親を介して「生長の家本流運動」と関係している。

他方、井上順孝は、自分の価値観に合うメディアだけを選択して他の視点を遮断する点で原理主義と似ているが、宗教的信念で一致しているわけではないと見る。アンドレアス・イルマーによれば中国の脅威に直面するベトナム、香港、台湾にもトランプ支持現象は確認される。政治力学で説明できるなら、宗教の影響を過大視するべきでない。

米国では主流派宗教指導者が暴動を批判した。だがブラド・クリスタソンやミシェル・ブーアスタインによれば、トランプ自身を神聖化し、不正選挙を覆す奇跡が起こるとする自称予言者・使徒の独立ネットワーク型カリスマ運動が暴動に関与した。ホーリー・ピヴェックは6600万人が運動と接触していると見る。

また首都暴動で角と毛皮の姿で報道されたQシャーマンことジェイコブ・チャンスリーはペイガニズムのシンボルを身にまとっていた。これに対し、ペイガンの複数団体が文化盗用だと批判し、自分たちは平和主義だと声明を出した。だがスザンナ・クロックフォードによると、彼は宇宙人・UFO体験、幻覚剤・瞑想による意識変容などニューエイジ的要素が強い。日本の支持者も「スピリチュアル」に見えることがある。しかし正体を隠した教団信者の可能性が高く、西村明の言う「隠される宗教」の一つだろう。森岡正博は衆院選への影響を懸念する。陰謀論を利用して影響力を強めようとする教団への注視は今後も必要だろう。

スペイン風邪禍の死生観 死という「絶対」から諦念へ 弓山達也氏10月8日

これまでも時々触れたスペイン風邪禍の調査で8月に福島県会津若松市の県立博物館、福島市の歴史資料館と県立図書館を訪ねた。図書館で『福島新聞』に「流行性感冒と聖上御軫念」(大…

分断社会の超克という課題 知と智恵のハイブリッドを 稲場圭信氏9月29日

今、世の中に多くの社会的課題が山積している。しかし、政治の世界は国民の声に耳を傾けているだろうか。宗教界は困難な状況にある人にどのように寄り添っていようか。そして、筆者が…

オンライン国際学会 コロナ禍、試行錯誤の運営 櫻井義秀氏9月10日

7月12日から15日まで、ベルギーに事務局がある国際宗教社会学会(ISSR)大会が開催された。本来は台北市の台湾中央研究院で開催予定だったが、コロナ禍のため2023年に繰…

因果論活用の限界 宗教的な共生の意志こそ

社説10月15日

いのちは選べるか 生かすためになすべきこと

社説10月13日

コロナの出口戦略 冒険するか安全策を取るか

社説10月8日
このエントリーをはてなブックマークに追加