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オンライン参拝を学生採点 体験型よりオンデマンド型

東京工業大教授 弓山達也氏

時事評論2021年2月26日 11時19分

東工大で宗教学を教えていると言うと不思議そうな顔をされる。理工系大学と宗教というのがミスマッチなのだろう。ただ学部と大学院で4コマの宗教学の講義の他、学部生向けの宗教学ゼミも開講している。

このゼミでは現地調査や若手信仰者との意見交換を行ってきた。しかしコロナ禍で遠隔授業となり、こうした実践型の講義ができなくなった。遠隔なら、ということでオンライン参拝調査をゼミ生と実施した。

インターネットを介した参拝自体は今に始まったことではない。ウィンドウズ95が出た直後から始まり、こうした動向に関する本紙連載記事が井上順孝編『IT時代の宗教を考える』として2003年に出版されている。06年には神社本庁がネットによる参拝・祈願・お守り等の頒布に注意喚起をして話題となった。こうした経緯もあって、オンライン参拝のサイトはたくさんあって、現実さながらの体験ができ、信仰上の効果があるものと思っていた。ただゼミ生たちと調べていくうち、そうでもないことが判ってきた。

ゼミでは「オンライン参拝は宗教の代替となるのか」という問いを立て、サイトの収集・検討を進めた。この際の着眼点を、〈神聖性〉を感じさせ、もし自分が信者ならサイトの体験が心の拠り所となるような〈信仰心〉を育むもの、そして教えを学ぶ〈規範性〉、他の閲覧者との一体感や連帯感という〈集団性〉、これを人に勧めたいと思う〈継承性〉の5点とした。

さて調査を始めて、写真だけのものなどを除くと、オンライン参拝に値するサイトがそう多くないことに気づいた。18人のゼミ生で集めたのは70余のサイトだった。そして意外だったのは、文字通りオンライン参拝できる体験型よりも、動画視聴のオンデマンド型が多かったことである。ゼミ生は70余のサイトから体験型とオンデマンド型それぞれ六つの候補を選び、それを先の五つの着眼点から講評し、両タイプから1位を決めていった。

講評と議論を聴いて面白いと思ったのは体験型に対する不評である。なるほどゲーム世代にとってオンライン参拝のリアリティーはどれも物足りないものだったようだ。今回は日本のものに限定したが、MUSLIM3Dというドイツのサイトはゲーム感覚でイスラーム文化が学べると高評価だった。国内体験型の1位は東京禅センターオンライン坐禅会。ゲームではなく、1日2回の坐禅指導である。ズーム開催なので参加者の顔も見え、終わった後には雑談する時間もある。

一方、オンデマンド型も海外のサイトの秀逸さが目立ち、モルモン教のクリスマス礼拝には圧倒された。国内の1位は、りょーしょーお寺チャンネル。これも読経動画配信ではあるが、動画は毎日更新され、住職がチャットや参拝者の声を拾いつつ、それに応えるところが高く評価された。

オンライン参拝といえども、インターネット技術を駆使してというより、むしろ対面と同じような、またはそれ以上にきめ細やかな宗教者との行き交いが、少なくとも若い世代に支持されたことは、コロナ禍の宗教行事のあり方に示唆を与えるものであろう。

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