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「内部統制」とは何か コントロールは自己に向けよ

北海道大教授 櫻井義秀氏

時事評論2021年4月9日 11時05分

「内部統制」と聞いてピンとくる人は、組織運営の長か、この種の問題で苦労している人である。私が勤務する北海道大学では、昨年、前総長が職務上不適切な行為があったとして文部科学大臣から解任され(前総長は北海道大学に事実関係と処分の不適切性を争う訴訟を提起し係争中)、文部科学省の国立大学法人評価委員会から「内部統制に抜本的な改善が必要」と指摘を受けた。そのため、新総長は内部統制を強化して信頼の回復に努めることを大学の目標に掲げている。

私は当初、これは話が逆ではないかと思っていた。組織内外から信頼される人がリーダーシップをとれば、統制を強化せずとも組織はまとまるし、メンバーの協力も得られる。統制を前面に出すのは、権威主義的国家の模倣ではないか、と。

ほどなく、私が内部統制という語の特殊な用法に精通していなかった誤解であることに気づいたが、この専門用語とシステムを無批判に導入することにも問題があるのではないかと考えている。

内部統制(inner control)とは、企業などの事業体が法や規制に則り、適切な財務管理と事業の評価・監査によって事業を効率的に行うしくみと定義されている。1990年代にアメリカで使われはじめ、日本でも企業会計審議会が2006年に使い始め、この10年の間に企業のみならず、自治体や大学でも用いられるようになった。

しかし、どのように内部統制の六つの基本要素とされる統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング、ITへの対応を有機的に連結させて、いわゆる組織の持続性や発展に結びつけていくのか、自治体や大学では企業ほど明確ではない。

北海道大学でも15年に総長裁定で内部統制の要項を定め、実施してきたはずである。その不徹底さが問題を生み出したというのだが、そうだろうか。

最近の大学教員は授業、研究活動、出張、備品購入、外部資金受入他に関して、所轄の係に事前に内容告知と事後に証拠書類や写真と共に報告をすることは当然として、種々の倫理や技能向上の研修への参加が義務化され、常に職員からモニタリングされている。

他方で、文科省からはトップダウンのマネジメントが強調され、人事・予算の権限を集中し、資源を総花的ではなく集中的に活用することが推奨される。しくみとしての統制は下には効くが、上には効かない。これはコントロールという言葉を統制と訳したために、統制の対象が他者や組織になり、自己に向かわない日本的な内部統制の変節があるからではないか。

結局のところ、教育・研究を行う大学組織として最大限のアウトプットは人材育成と科学への寄与、社会的還元なのだが、組織マネジメントに教職員の活力の半分が費やされる現実がある。

さて、教団などの包括宗教法人においては、内部統制という言葉はまだ出てきていないだろうか。これこそ、対岸の火事ではなく、他山の石としてもらいたい。宗教こそ、コントロールは本来自己に向かうものであることを強調したいものである。

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