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「人助け指数」最下位の日本 「無自覚の宗教性」若者に期待

大阪大教授 稲場圭信氏

時事評論2022年7月15日 10時04分

イギリスの慈善団体チャリティーズ・エイド・ファンデーションが毎年発表している「世界人助け指数」の報告書がインターネット上で公開されている(WORLD GIVING INDEX 2021)。これは、過去1カ月間に「見知らぬ人を助けたか」「寄付をしたか」「ボランティアをしたか」を調査して、国別ランキングをつけて公表しているものだ。今回、日本は調査対象114カ国の中で最下位となった。

参院選にむけて、この調査結果を朝日新聞が取り上げ、格差が広がる社会にあって必要なことと共生について識者に聞いている(朝日6月22日)。格差対策の必要性や自己責任ではなく利他の心をと訴える識者たちには共感する。一方で、この取り上げ方には違和感を覚える。

日本の名誉のために、先取りして補足を入れておこう。「日本は、先進国としては例外的に限られた市民団体しか歴史的に存在してこなかった。日本の寄付に関する制度は複雑で、また、政府による対策に対する期待が高く、組織化された非営利は比較的新しい現象である」と報告書は日本人の論文を参照して説明している(上記9㌻)。

今回の調査で全体の1位はインドネシアで、見知らぬ人への助けは65%がしており、調査国中26位、寄付をした人は83%で1位、ボランティアをした人は60%で1位であった。ボランティア先進国のアメリカは見知らぬ人への助けは58%で54位、寄付は45%で24位、ボランティアは26%で21位、全体で19位だ。日本は見知らぬ人への助けは12%で114位、寄付は12%107位、ボランティアは12%91位、全体で114位だ。

ちなみに、この調査は過去1カ月間にそのような行為をしたことがあるかを聞いており、寄付額は考慮されていない。利他行動、寄付行為、ボランティア活動に積極的であるか消極的であるかは、その国、その社会の特質、文化的・宗教的背景、そしてそのような行為に関連した社会制度にも多くの影響を受けていると考えられる。とりわけ、このような人助け、利他は宗教で説かれており、世界最大のイスラーム人口を有するインドネシアが1位となったのはそのような宗教的要因も大きいと言えよう。

日本では自分を無宗教と考える人が7割以上である。とはいえ、日本人の精神基盤には、今なお、宗教と関わり深いものが残されている。宗教や信仰に関わる初詣や墓参りなどの儀礼、祖先祭祀を行っている人は7割ほど、また宗教的な心を大切とする人も7割近くにのぼる。命のつながりに対する感謝の意識が漠然と生きている。

「おかげ様」という表現などに表れる感謝の念などは、今なお、日本人の多くに共有されていると考えられる。筆者は、このような「無自覚に漠然と抱く自己を超えたものとのつながりの感覚と、先祖、神仏、世間に対して持つおかげ様の念」を「無自覚の宗教性」(『利他主義と宗教』弘文堂)と呼んでいる。

若い世代にも無自覚の宗教性はある。そして近年、日本でも若い人たちの間でクラウドファンディングによる寄付文化が育っている。共生社会に向けて、若い世代に期待したい。

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