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ヒンドゥー教徒の新首相 英国の苦境を救えるか

大阪大教授 稲場圭信氏

時事評論2022年11月16日 09時29分(2022年11月17日 09時33分更新)

英国がまたもや苦境にある。大型減税策で金融市場の混乱を起こし、首相就任からわずか約50日で首相を辞任したトラス氏に代わりかじ取りをするのがリシ・スナク氏、42歳だ。43歳で首相に就任したブレアとキャメロンを抜き、この2世紀の英国政治において最年少の首相である。

スナク首相がヒンドゥー教徒であることも各紙が取り上げている(The Guardian, THE SPECTATOR など)。彼はインド系の両親のもとに英国で生まれた。英国教会の国において、ヒンドゥー教徒、有色人種の首相が誕生するのは初めてのことで、「多様化を象徴」との記事もある(朝日新聞、10月26日)。はたして多様化の象徴になるのか。

振り返れば、2016年、EU懐疑主義を掲げるUK独立党に加え、保守党の中にもボリス・ジョンソン(のちの首相)らEU離脱派がいて国民世論に影響を与えた。彼らは、移民や難民が社会保障にタダ乗りし、職を奪い治安を悪化させている、英国の伝統的文化を希薄化させていると非難し、EU離脱を訴えた。スナク氏も離脱に賛成した。

多文化共生の道を進んできた英国で、国民投票後、残念なことに人種差別、ヘイト・スピーチ、移民へのいやがらせがエスカレートしたと報道された。この同じ英国で、1997年、トニー・ブレア率いるニューレイバー政権は排除された人、孤立した人を取り込む包摂社会を目指した。市民の自発性にもとづくパートナーシップが進められた。そして、信仰を基盤にしたチャリティ団体が貧困の撲滅や社会福祉の現場で幅広く活躍している。しかし、包摂社会の実現は容易ではない。多文化主義は今や瀕死の状況となった。

英下院では、エスニック・マイノリティの議員が1割を占めている。2015年の選挙では41議席、17年の選挙では52議席、19年の選挙で65議席となり、増加傾向にあることは間違いないが、エスニック・マイノリティの6割近くは、この状況に満足していない、英下院は広く国民を代弁しているとは思っていない(YouGov, 10月28日付)。スナク首相はオックスフォード大学などで学んだエリートで大富豪であることから、経済的苦境にある国民を理解できないのではないかといった批判もある。一方で、彼は、週末にはヒンドゥー寺院に通う熱心なヒンドゥー教徒だ。マイノリティの人たちを代表しているのか、アイデンティティ・ポリティクスに力を与えるものとなるのか。

スナク首相はダウニング街10番地での就任演説で、経済の安定を最優先するとし、そして「私は言葉ではなく行動で、この国を結束させる」と述べた。新型コロナ感染症、ロシアによるウクライナ侵攻、エネルギー危機、そして金融市場の混乱、物価高、労使闘争の激化とストライキの頻発など厳しい国内外の厳しい状況下での船出だ。

この困難な状況や批判に対処し、英国を善き方向に導けるだろうか。1997年、ロンドンに留学中の筆者は、43歳の若きトニー・ブレアが首相に就任した時の熱気を覚えている。今、若き、そして、エスニック・マイノリティの首相は何かを変えることができるであろうか。

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