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2024宗教文化講座

「アバヤ」と「カミス」 再燃する宗教的衣装の問題

東京大教授 伊達聖伸氏

時事評論2022年12月14日 10時56分

12月9日は、ライシテの基本法である1905年の政教分離が制定された日である。近年のフランスはこの日を記念日にして大切にするようになっている。

そうしたなかで、この1年ほど公立中学や高校でのライシテ違反が増加中と報告されている。教育省によれば、9月で313件、10月で720件の違反があった。その多くが、ムスリムが着用するアラブの伝統的民族衣装アバヤとカミスに関するものだという。アバヤは女性用、カミスは男性用の長衣である。

フランスでは、2004年の法律で公立校における「これ見よがしな宗教的標章」の着用を禁じており、キリスト教徒の大きな十字架、ユダヤ教徒のキッパ、ムスリムのヴェールが該当する。その後、公共空間全般でのブルカやニカブの着用が禁じられ、浜辺やプールでのブルキニの着用の可否が論争になってきた。今回再び学校を舞台に特定の衣服が問題化している。

内務大臣のG・ダルマナンと市民権担当副大臣のS・べケスは、ライシテ違反の報告件数急増はイスラーム主義者が攻勢を強めているためだと強調する。教育大臣のP・ンディアイも04年の法律を厳格に適用すべきだと主張している。

ヴェールはそれ自体で「これ見よがしな宗教的標章」を構成するとされているが、アバヤやカミスは現状ではそのリストに入っていない。しかし、宗教的祭礼などで着用される伝統的衣装をつねにまとい、外す要請を拒否し続けるなど、生徒の態度によっては、これ見よがしな宗教的標章のカテゴリーに入りうる。

アバヤやカミスを着用する生徒やその親たちは、衣装の宗教的側面を否定して文化的側面や伝統的側面を前面に打ち出し、学校での着用を正当化しようとする。思春期の子どもたちは、アラブ・イスラーム文化圏に由来する服を着てティックトックなどのSNSでネット空間に流すが、背景に流れている音楽はラップなどで、その歌詞はイスラームという宗教の敬虔さを感じさせるものではない。

校長らは判断に迷っている。同じ地域でも、こうした挑発は由々しき問題だと考える校長も、長衣は問題ではないと考える校長もいるようだ。それでも、ケースバイケースの解釈の余地を求める声は少ない。教育省には明確な統一見解を出すことが期待されている。

ムスリムであるなしを問わず、高校生の過半数がヴェールを含む宗教的標章の着用に賛成という数字も出ており、世代間の差も浮き彫りになっている。教員のなかにも、思春期は自分のアイデンティティーを求める時期と理解を示す者もいる。アバヤに身を包む一方で髪を赤く染める女子生徒もいるようで、その格好は過激的なイスラームとはひとまず無縁である。

宗教批判で知られるヴォルテールは『寛容論』で、「今日の課題は、穏健なひとびとに生きる権利をあたえ、そして、かつては必要だったかもしれないがいまでは必要性がないような厳しい法令の適用をゆるめることである」と書いた。だが、現代フランスの世論は学校でのヴェール禁止を大前提としており、アバヤやカミスを認めるくらいなら制服にしてはどうかという意見まで出てきている。

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