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宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
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第15回「涙骨賞」受賞論文 奨励賞

葦津珍彦の思想について

―戦後における天皇論・神道論を中心に―

今西宏之氏
第二章 葦津珍彦の「国家神道」論について
第一節 「国家神道」論の前提

いわゆる「国家神道」なる概念は論者によってその意味する内実がまるで変わってしまう、相当に幅の広いものである。

葦津の後継者として国家神道研究を行っている阪本是丸は「国家神道研究は、戦後の政治的宗教的イデオロギーの対立をめぐる「政治史」の過程から生まれ出たものであり、当初から政治的イデオロギー性を濃厚に有した日本近代史研究の一分野として出発した。それ故、その刻印された、いわば「緋文字」とでも称すべき出生の秘密はいまなお学術的研究としての国家神道研究にも暗い翳を残している」と「国家神道」の研究が否応無しに政治的イデオロギーの発露の場になってしまう要因を説明している1010坂本是丸「「国家神道」研究の四〇年」 『日本思想史学』第42号 2010年9月。そして阪本自身がそのくびきから完全に逃れていないこともまた指摘せねばならない。では、この「国家神道」なる言葉、あるいは概念は現在、いかなる理解を一般にされているのであろうか。小学館の日本大百科全書には次のように記されている。

神道の一形態で、近代天皇制国家が政策的につくりだした事実上の国家宗教。神社神道を一元的に再編成し、皇室神道と結び付けた祭祀中心の宗教である。王政復古を実現した新政府は、1868年(明治1)祭政一致、神祇官再興を布告して神道の国教化を進め、神仏判然令で神社から仏教的要素を除去して、全神社を政府の直接の支配下に置いた。71年、政府は全神社を国家の宗祀とし、社格を制定して、神社の公的地位を確立した。皇室の祖先神天照大神を祀る神宮(伊勢神宮)は、全神社の本宗と定められた。82年、祭祀と宗教の分離が行われ、国家神道は、非宗教、超宗教の国家祭祀とされた。明治中期には、教派神道、仏教、キリスト教の3教が、国家神道に従属する事実上の公認宗教となり、国家神道体制が成立した。1889年大日本帝国憲法が制定され、その第28条は「信教ノ自由」を定めたが、それは、国家神道の枠内での宗教活動の容認にすぎなかった。天皇は神聖不可侵の現人神とされ、国家神道の最高祭司として祭祀大権を保持する存在となった。翌年出された「教育勅語」は、国民に天皇制国家への忠誠を命じるとともに祖先崇拝を強調し、国家神道の事実上の教典となった。また各学校へ配布された天皇・皇后の「御真影」は、国家神道の事実上の聖像として礼拝の対象となった。1900年(明治33)内務省に神社局が設置され、神社行政と宗教行政が分離された。明治後期には、皇室祭祀を基準として神社祭式が定められ、神官神職は待遇官吏として公的身分を与えられた。神社の経営には、国および道府県市町村から供進金が支出された。国家神道のもとで、国内をはじめ植民地、占領地などに靖国神社、橿原神宮、明治神宮、朝鮮神宮、建国神廟などの神社が相次いで創建された。国民は天皇崇拝と神社信仰を義務として課せられ地元の神社の氏子に組織された。1940年(昭和15)「紀元二千六百年」を機に神社局は神祇院に昇格し、戦争の激化とともに、国体の教義が鼓吹された。日本は万世一系の天皇が統治する万邦無比の神国とされ、世界征服を意味する八紘一宇が「聖戦」のスローガンとなった。敗戦直後の1945年(昭和20)12月、GHQ(連合国最高司令部)は神道指令を発して、国家神道の廃止と政治と宗教の分離を命じた。神社神道は国家的公的性格を失って、民間の宗教として再出発することとなり、47年神社本庁が設立された。

長々と引用したが、現在、世間での一般的な「国家神道」のイメージはおおよそこのようなものだろう。つまり戦前の日本を凄惨な戦争に引きずりこんだ悪しきイデオロギーというものである。

この項目を執筆したのは宗教学者の村上重良である。そしてこの村上が1970年に岩波書店から刊行した『国家神道』こそが「国家神道」研究の初発であった。現在でも「国家神道」研究はこの書を抜きにしては考えられない。そして葦津の代表的著作のひとつと言える『国家神道とは何だったのか』は村上流の「国家神道」論を突き崩そうとして執筆されたものである。

本章ではまず村上の『国家神道』を読み込み、村上流「国家神道」論の大筋を確認した上で、その反論として書かれた葦津の『国家神道とは何だったのか』を検討する。そして宗教学者、島薗進が2010年に発表し、物議を醸した『国家神道と日本人』を併せて検討する。その上で葦津の「国家神道」論がどのようなものであったかを解明していく。

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