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宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
第16回「涙骨賞」を募集
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第16回「涙骨賞」を募集 中外日報宗教文化講座

涙骨賞第15回受賞者〈選評〉

論文部門

戦争と慰霊考察 君島彩子氏

国際日本文化研究センター名誉教授 末木文美士氏

受賞作は、アジア太平洋戦争の激戦地硫黄島、レイテ島、グアム島、サイパン島の4島で、いずれも戦死者慰霊のために建立された「マリア観音」について考察したものである。

島ごとに建立のいきさつも異なり、その受容も異なっている。例えば硫黄島の場合、造立されても盗まれ、射撃の的として破壊され、その代わりに「得体の知れない像」が立てられたり、という数奇の運命をたどっている。

しかし、なぜか4島ともに同じ名称で親しまれている。そこには宗教や民族、国家の違いを乗り越えて、平和を祈ろうという共通の願いがあるのではないか。

筆者は自身のフィールドワークをもとにしながら、これまでほとんど知られていなかった島々の「マリア観音」を丁寧に紹介して、その意義を考察している。論文としてはいささかまとまりが悪く、事例紹介に終わっている面はあるが、貴重な資料を提供し、戦争と慰霊についての議論に一石を投じた点が、選考委員会で高く評価された。

君島彩子氏 この度は第15回涙骨賞論文部門に選んでいただき、誠にありがとうございました。宗教学の研究者として、このような賞を頂き大変光栄に思います。今後も今回の受賞を励みに、より一層研究に精進していきたいと思います。

葦津研究に一石 今西宏之氏

上智大特任教授 島薗進氏

戦後の神道界、右翼思想界に大きな影響を及ぼした葦津珍彦はもっと関心をもたれてよい存在だが、さほど論じられていない。そこで、葦津が交流した橋川文三や鶴見俊輔などとのやりとりに注目し、葦津を「戦後」に適合的な「リベラル」な天皇論、神道論を展開した人物として論じている。また、葦津が君主制の比較に関心をもち、そこから天皇制の擁護を行った点にも注目し、福澤諭吉の論と比較している。また、「国家神道」概念についての議論も振り返っている。

葦津が「立証」したとか「ロジカル」だという断定は、あまりロジカルでなく立証が甘いし、葦津が伊勢神宮と皇室の一体性を唱え続け、国家と神道の関係という点で戦前の体制への回帰を目指す戦後神道界をリードした面が捉えられていないなど、難点は多々あるが、葦津研究の重要性について一石を投じた一文として奨励賞に値すると評価された。

今西宏之氏 今回は奨励賞という評価をいただき、ありがとうございます。平成が終わり「令和」という新時代を迎えようとしている今、葦津珍彦という人物の思想を研究することは必須であると考えています。私の論考がその一助となれば、望外の喜びです。

実践部門

つながり再構築 帰厚院

相愛大教授 釈徹宗氏

お手伝いのお母さんにちゃんとお礼を言ってからいただきますお手伝いのお母さんにちゃんとお礼を言ってからいただきます

今回、帰厚院「カレーの日」が選ばれたのは、地方寺院の地道な取り組みを評価していこうという本賞の姿勢の表れである。人口1万2千人の町で、老若男女150人以上が集う場づくりを毎月開くのはたやすいことではないだろう。日常の関係性や信頼がベースにあってのことだと推察する。

近年、“カレー”をツールとした寺院の活動がしばしば見られる。4月8日の花祭りにカレーを食べようと呼びかけている僧侶たちもいれば、「カリー寺」と呼称するお寺フェスティバルの取り組みもある。

かつての地縁・血縁に基づいた共同体が解体されていく中、“地域コミュニティーの拠点”としての寺院活動が注目されるようになった。つながりの再構築を目指す場づくりである。帰厚院にも同様の姿勢が見られる。「カレーの日」は、檀信徒たちがお寺の台所をつかって準備や調理を行う“共食行為”であり、いわば日本寺院においては伝統的な形態だ。そしてこのような営みは、共同体の本質に根ざしたものなのである。

成田賢一氏 北海道の田舎寺がお受けしてよいものかと迷いましたが、毎回協力していただけるお母様方や、お手伝いをしてくれる子供たちにとってもさらなる励みになるかと思います。名誉ある賞をいただき本当に有難うございました。

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