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宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
墨跡つき仏像カレンダー2021
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墨跡つき仏像カレンダー2021 第17回「涙骨賞」を募集

第16回涙骨賞〈選考委員選評〉

論文部門

勤王僧の顕彰追跡 髙橋秀慧氏

上智大特任教授 島薗進氏

明治維新の際、尊皇の志士たちの側について、体制変革に貢献した僧を「勤王僧」という。明治時代に勤王僧が顕彰されていった過程を追うという問題意識は意義深いものだ。「尊皇・勤王」が国民に規範として広められ、受け入れられていく過程を追うためのよい手がかりを提供してくれるからだ。

この論文では代表的勤王僧となった月性を取り上げ、手堅くその作業を進めている。明治時代に国家神道や神聖天皇崇敬が形成されていく際、仏教も多くの役割を果たしていることがわかる。国家による顕彰と仏教教団による働きかけの相互関係の解明は、神聖天皇崇敬普及の道筋の理解に新たな光を投げかけてくれる。長州と縁が深かった本願寺派が、明治国家体制のなかで足場を固めていく過程を知る上でも興味深い。

「近代仏教」(伝統仏教の近代的様態)が国家神道や神聖天皇崇敬とどう関わりあってきたかについて、これまでの研究成果は豊かとは言えない。戦争などいくつかの局面以外に適切な切り口を見いだしえないで来たところがある。この論文は「近代仏教研究」に新たな光を当てるものとしても高く評価できる。

髙橋秀慧氏 この度は涙骨賞本賞を授与いただき、誠にありがとうございます。栄えある賞をいただき、光栄に存じます。選考委員の先生方、調査にご協力いただいた僧月性顕彰会の皆様に感謝申し上げます。これを励みに研究活動に一層邁進してまいります。

聖書の新解釈提示 大川大地氏

国際日本文化研究センター名誉教授 末木文美士氏

今回は質の高い応募作品が多かった。すでに定評のある研究者の応募もあったが、新人やこれまで評価を得ていない方に光を当てるのが本賞の役割だという観点から、選考対象から外した。受賞作が近代日本宗教史の分野に属するものであったのに対して、まったく異なる分野で目を引いたのが大川大地氏の応募作であった。

氏の論文は、新約聖書のガラテヤ書3章27-28節に関わる。洗礼を受けたものは、ユダヤ人/ギリシャ人、奴隷/自由人、男/女という二分法を克服して、「キリストを着る」ことになるという表現をめぐり、それがキリスト教徒/異教徒の新しい二分法にならないかという批判に対して、そうではなく、権力規範に対して「闘う衣服」を着るのだと解釈している。

海外の研究を渉猟して、聖書の一節に衣服・ジェンダー・権力という今日的な問題意識から挑んだ意欲が評価された。しかし、先行研究に依拠するところが多く、氏自身の独創性がはっきりせず、また注の不十分のところがあるなど、未完成の感があり、奨励賞として今後に期待することとした。

大川大地氏 この度は栄誉ある「奨励賞」に選んでいただき、心より感謝いたします。学びを支えて下さっている多くの方々と喜びを分かち合おうと思います。新型肺炎が猛威を振るう中での受賞となりました。この事態が分断ではなく共存のための契機となるように願います。

実践部門

過疎地寺院を再生 上田慧恭氏

相愛大教授 釈徹宗氏

今回の実践部門は、廃寺必至と言われながらも、過疎地寺院である光照寺を盛り立てる上田慧恭住職に決まった。

光照寺がある福井市赤坂町は限界集落である。赤坂町は早くから人口減少の地域であった。すでに50年以上前から廃寺になる寺だと言われており、前住職(上田慧恭住職の義兄)も廃寺を視野に入れていたらしい。

2006(平成18)年、縁あって上田慧恭師が住職に就いた。この時、上田師は65歳。門徒は寺の周辺に2軒、集落外に数軒。ところが光照寺の報恩講には80名ものお参りがあり、大変なにぎわいとなる。それは、コーラスグループの活動や、オリジナル脚本による寸劇や、リフォームした着物を用いたファッションショーなど、様々な取り組みによるものだそうである。

活動自体は珍しいものではない。そして娯楽的要素で一時的に人が集まっていることをどうとらえるかによって評価は分かれるだろう。しかし、門信徒と共に手に手を取り合いながら、厳しい状況におかれている寺院を息づかせている姿勢は本賞の性格に合致すると判断された。

上田慧恭氏 受賞の報を聞き、大変光栄です。寸劇の第1作目で浄土真宗のみ教えに合った「地獄の仕分け人」を書けたことがうれしく、また様々な場所で上演させていただけたのが最大の喜びでした。今後はお寺のある集落に花木を植えるなどして美しい景観を作っていきたいと思います。

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