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宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
第18回「涙骨賞」を募集
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中外日報宗教文化講座2021 第18回「涙骨賞」を募集

第17回涙骨賞〈選考委員選評〉

論文部門

スケール大きい 上野庸平氏

国際日本文化研究センター名誉教授 末木文美士氏

神智学を中心とするオカルト主義や神秘主義が西洋近代の仏教受容で決定的な役割を果たしたことは、近年常識化して、その研究も進みつつある。受賞作もその流れに棹さすが、20世紀前半から中葉までのフランスに重点を置いたところに新鮮さがある。

特に、西洋女性として初めてチベットに入った探検家アレクサンドラ・ダヴィッド=ネールの著作活動と、英国人作家がチベットのラマ僧を偽装して書いたロブサン・ランパの『第三の眼』の受容に重点を置いて検討する。そのいずれもが神智学の影響下にあることが論証され、その基本的な枠組みは現代にまで及ぶことが示されている。そこに西洋近代の仏教受容の特徴と偏向が明らかにされる。スケールの大きな問題が明快に論述され、研究者のみならず、一般読者にも興味を覚えさせるものであり、受賞作に相応しいと評価された。

しかし他方、全体に概説的で問題が十分に深められていないこと、英米圏の動向にかなりの分量が費やされ、フランスの独自性がはっきりしないことなど問題点も多い。著者が今後さらに研究を深め、精緻な論を大成することを期待したい。

上野庸平氏 この度は涙骨賞本賞を頂きまして、誠にありがとうございます。このような栄誉ある賞に選ばれ、恐悦至極に存じます。拙稿を評価してくださった諸先生方や中外日報社の皆様のお心をしかと受け止め、今後とも研究活動に勤しんでまいります。

ドラマ性に富む 高松世津子氏

相愛大副学長・教授 釈徹宗氏

今回、高松世津子氏の「近世戒律復興運動の祖師・俊正明忍の対馬における奇瑞・臨終瑞相をめぐって」が奨励賞に選ばれた。論文としての完成度と、学術論考でありながらドラマ性に富む内容は、選考会でも高く評価された。

近世仏教の戒律復興運動を取り上げた研究は、まだまだ数が多いとは言い難い。そんな中、対馬に渡り35歳で病死した明忍に注目して、「自誓受戒」「好相感得」「別受相承」「臨終瑞相」といったポイントをおさえたオリジナリティーのある立論となっている。論旨もしっかりしており、論点も明確である。明忍において、戒律復興への思いと共に浄土信仰が熟成していくつながり具合が、個人的には興味深いものであった。

難点を挙げるとしたら、「さまざまな背景において僧侶が戒律を守らない状況」「その後は世相が混乱する」「その後の近世仏教に大きな影響を与えた」などと述べられているあたりは、少し雑な印象を受ける。しかし、これは限られた字数内においてはやむを得ないところだろう。

高松世津子氏 この度は涙骨賞奨励賞を授与下さいまして、誠にありがとうございます。選考委員の先生方、また調査させていただきました西明寺様、ご指導下さいました諸先生方のおかげであり、皆様に心より感謝申し上げます。今後も研究を進めてまいりたいと思います。

実践部門

生活支援を10年 ひとさじの会

上智大教授 島薗進氏

山谷など、東京の下町の生活困窮者や路上生活者が多い地域で、夜回りなど、生きづらさを抱える人たちの支援活動を行い、仏教の教えの理解を深める活動を続けている若手僧侶を中心とする団体だ。その活動はすでに10年を超え、現代日本の仏教の新たな可能性を切り拓いてきた団体である。

浄土宗の宗祖である法然の伝記に、法然が路上の病人にひとさじずつ重湯を口に運ぶ姿が描かれており、その逸話から会の名称ができている。宗派を超えて協力する若手の僧侶と、一般のボランティアの人たちとの交流も意義深いものだ。

孤立する人たちも、実はともに生きることを求めており、その気持ちを汲み取りながら、人々が支え合って生きていける関係の構築を目指している。身寄りのない人たちの葬送の支援にも力を入れている。東日本大震災の支援活動や新型コロナウイルス感染症流行で困難に直面したベトナム人の支援など、折々の支援活動も行ってきた。仏教界の、また一般の支援者たちとの情報交換を通して力を蓄えており、現代仏教の社会的実践活動に新たな光を投げかけており、涙骨賞の実践部門を受賞するにふさわしい団体である。

社会慈業委員会ひとさじの会 この度、栄えある賞を頂きましたこと、大変ありがたく思います。一方で、私たちのような団体が盛んに活動しなければならない社会の現状は悲しいことでもあります。すべてのいのちが平安に暮らせるよう、今後も行動してまいります。

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