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中外日報社は3月23日、第18回涙骨賞選考委員会をオンラインで開き、大谷由香氏(43)の論文「不殺生と自死」を受賞作とすることを決めた。

今回は19編の応募があり、最終選考に残った6編を、島薗進・東京大名誉教授、末木文美士・国際日本文化研究センター名誉教授、釈徹宗・相愛大学長が審査した。なお、実践部門は休止とした。

大谷氏は1978年、香川県生まれ。龍谷大特任准教授。受賞作は「自死は仏教で禁じられている」のか否かという戒律解釈史上のテーマについて、漢訳仏典や注釈書を丁寧に読み解きながら検証。自死が不殺生に抵触するとの解釈は必ずしも伝統的に支持されてきたものではないことを示した上で、自死と宗教者の関わりを巡る現代的な問題意識についても議論を接続させようと試みていることなどが評価された。

大谷由香氏の話
学生の頃にポスターを見てから、いつかはこの賞をいただけるような論文を書けるようになりたいと思っていました。憧れの賞をいただけて本当にうれしいです。誠にありがとうございます。賞名の由来たる真渓涙骨氏は、船の燃料を焚く火夫に自らを例えたと聞きます。私もこの賞に恥じない、仏教の火を焚き続ける研究者であり続けたいと思います。

第18回涙骨賞〈「仏教と自死」解読 選考委員選評〉

相愛大学長 釈徹宗氏

授賞作である大谷由香氏の「不殺生と自死」は、「仏教において、自死は不殺生に抵触する重罪であるのか」が論点となっている。近年、「仏教では自死をどう考えてきたか」との論考はしばしば見受けられ、考察の根拠を律蔵に求める場合も少なくない。しかし、本作品のように、文献研究としてまとまった論文になっているものは貴重である。論者は、自身の専門である東アジアの仏教(すなわち漢訳仏典)に領域を特定して、四律(『十誦律』『四分律』『摩訶僧祇律』『五分律』)を比較検討し、自死に殺戒を適用する場合、不適用とする場合、などを丁寧に読み取っていく。

文献を通して検証する方法論、出典の取り扱いや論述表現、いずれもしっかりしており、論文としての完成度も評価できる。と同時に、読み手を引きつける魅力もそなえている。やはり、自死という誰にとっても関心の高い問題をテーマにしている点が大きい。

「まとめ」で現代へと引き寄せた考察の部分が、少々雑駁な印象を受ける。これは今回の論文の論旨からすれば、付言のような形になるためであろう。ここは論者にとって、自死問題を引き続き論じていく際の課題だと思われる。今後の論考も期待したい。

東京大名誉教授 島薗進氏

仏教が自殺をどう捉えるか、基礎的な研究を踏まえ、多面的な考察が待たれる。今回は古代神道の野心的な論考もあったが評価が割れた。論証が難しい領域だ。

国際日本文化研究センター名誉教授 末木文美士氏

受賞作以外にも、多くの力作が寄せられ、そのテーマは、日本の古代宗教・神話から、仏教文献、さらには今日の仏教のあり方まで多岐にわたった。ただ、問題意識やアイデアは優れていても、十分な実証が伴わないなどの問題があり、残念だった。

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