合理的配慮
改正障害者差別解消法が施行され、障害者の求めに応じ「合理的配慮」をすることが、4月から民間事業者にも義務づけられた。何をどこまですればいいのか、企業によっては研修会を開いているところもあるようだ◆政府のホームページには、車いすの人のために備え付けのいすを片付ける、弱視難聴の人に筆談の字を大きくする、などの具体例が示されている。そしてただし書きに「あくまでも考え方の一例であり、実際には個別に判断する必要があります」とある◆困りごとは人によって千差万別。画一的な対応では配慮にならない。そこで政府が強調するのが「建設的対話」だ。互いの状況を理解し合い、双方が歩み寄って無理なくできることを見いだそうというのだ。お寺であれば「車いす用スロープを造るお金はないから、お堂に上がるのに手を引いてあげましょう」といった具合になろうか◆そんな優しい光景はお寺ではしばしば見られる。筆者も車いすを持ち上げるのを手伝ったことがあるが、その日はずっと温かい心持で過ごせた◆段差などの物理的な障壁よりも「心のバリアフリー」が重要だとよく言われる。相手を理解しようとする心があればバリアを乗り越えられ、思いやりを持って行動すれば気持ちよく生きられる。対話を重視する今回の改正法は、菩薩の社会への扉を開いてくれたような気さえする。(有吉英治)