PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
新規購読紹介キャンペーン
PR
2024宗教文化講座

人生の学び 大事なのは体験で得た知恵(4月12日付)

2024年4月17日 10時09分

人生は学びと共にある。生まれてから死に至るまで、人は学びつつ成長する。その学びを助けるのが宗教であり、宗教もまた、人として、正しく、幸せに、他者と共に和して生きることを学ぶよう促し、志向する世界にほかならない。祖師は私たちに教義を教え込もうとしたのではない。どう生きるべきかを示し、よりよい生き方を学ぶよう促す先導者であった。今この時の喜び、悲しみ、怒り、憎しみ、嘆き、それらの全てが学びであり、人生は全て学びの中にあると言ってよい。

「冷暖自知」という禅語がある。冷たい、熱いは、自ら直接知ることが大事、あるいは自分で感得するしかない境地というものがあるということであり、体験の重要性を言い表す言葉だ。幼時体験の重要性が指摘されるのは、経験の少ない年頃に肌身で感じたこと、刺激を受け、感覚として味わったこと、知覚し見聞きしたことが、その後の自己形成に大きな影響を与えるからであろう。

臨済宗妙心寺派の山川宗玄管長は、雪の降る厳寒の冬に素足で托鉢する意味を説いている。寒いから足袋を履いて歩けばよさそうなものだが、足袋を履くとぬれた足袋ごと足が凍り付く。素足にわらじ履きで歩けば、最初のうちは足がかじかみ感覚を失うけれども、やがて血が巡ってくる。これも実際の経験から得た学びである。

子どもの頃の泥んこ遊びが大事だといわれるのは、大地を転げ回って全身が泥まみれになる感覚を知ることが、地球上に裸で生まれてきた人間の原初的な生活体験となるからだろう。そうした経験を通して生きるための知恵を学ぶことができ、体験から学んだ知恵が成長を促す原動力となり、人生を導く重要な働きをする。その意味でも、五感と意識をフル回転させて経験する時間の質量が人間の健全な成長には不可欠の条件であり、人生の学びだと言えるのではないだろうか。

失敗も成功への道を開く学びとなる。「羹に懲りて膾を吹く」ということわざのように、一度の失敗に懲りて臆病になり、二度と同じ失敗を繰り返さないためにその道を迂回するだけなら、前進への学びとすることはできない。なぜ失敗したのか、原因を探り、失敗を乗り越える道を求めることが失敗からの学びとなる。

体験を離れたところで生きた知恵を身に付けることはできないだろう。仮想された現実を頭で理解するインターネットの空間に浸りながら、血の通った知恵を学ぶことができるだろうか。このことを改めて問うてみる必要がある。

『虚構新聞』20周年 機知による風刺の力(5月1日付)5月8日

インターネットで人気を博し、テレビでも何度も取り上げられた完全パロディーメディア『虚構新聞』の創刊20周年を記念した展覧会が先頃開かれた。自ら「全てフェイクニュース」と宣…

共助への行動 地域社会と手を携える寺院(4月26日付)5月1日

災害時に自治体や関係団体と仏教者が連携して支援活動を展開する動きが広がりつつある。京都府の亀岡市仏教会は3月、災害時に協力体制を敷く協定を同市社会福祉協議会と結んだ。同仏…

長期化するガザ侵攻 宗教と平和が問われている(4月24日付)4月26日

パレスチナでの戦闘が半年を超え多くの人命が失われ、ガザ地区の生活基盤は壊滅的な打撃を受けているが、なお戦闘は終結していない。イスラエルは、ハマスを壊滅させるための戦いであ…

僧侶から赤札を授けられる参拝者

「赤札」求め長蛇の列 10年ごと大開帳始まる 川崎大師

ニュース5月9日
慶讃文を読み上げる別所貫首

宗祖へ報恩の思い新た 比叡山定光院で立教開宗会 京門連

ニュース5月9日
「今年度の採用や施設整備を進めると、満床の28床が見えてくる」と話す後藤理事長

あそかビハーラ病院の事業継承 日伸会・後藤理事長インタビュー〈上〉 理念と経営、バランスが大事 意思疎通に問題 稼働率向上、黒字に転換 

ニュース5月9日
このエントリーをはてなブックマークに追加