日本仏教に未来はあるか…平岡聡著
「日本仏教は、これからの社会で生き残ることができるのか」――。仏教研究者で僧籍を持つ著者が日本仏教の問題点を取り上げ、未来に向けて提言する。2022年の第46回全日本仏教徒会議山梨・身延山大会での記念講演の内容を基に加筆した。
提言の前提として、戒律や葬式、戒名の歴史的経緯を考察し、現在の日本仏教の問題点をひもとく。葬儀の際の布施額や戒名料の歴史的正当性は不透明で、費用の捻出から得られる対価が在家者にとって少ないと問題視。「葬式仏教」が「日本仏教の中で最大の批判対象であるからこそ、それを改革すれば、社会の認識を大きく変えることができる」とし組織や制度の改革の必要性を説く。
宗派主義的な発想だけにとらわれず、外部組織との連携や第三者評価の導入による「開かれた組織」を目指した改革案を示す。中世以降、日本仏教は「死」に関する事柄に取り組んできた。現代でも病院などと連携し遺族らのケアに取り組むことを日本仏教の優先課題に挙げる。また現行の住職世襲に関しては「『志』のない僧侶の再生産装置」と非難する。その上で「出家者自身が戒律を守れていないにもかかわらず、在家者に戒名を強要するのは大きな矛盾」とし戒律復興による少数精鋭の出家集団の形成を訴える。
定価2750円、春秋社(電話03・3255・9611)刊。