次世代創造に挑む宗教青年 地域振興と信仰継承をめぐって…川又俊則・郭育仁編
地方の衰退が叫ばれるようになって久しい。国や自治体も企業誘致や子育て支援による移住促進など数々の地方創生策を打ち出すが、地方の人口減少は一向に歯止めがかからない。同書はこれまで国や自治体があまり関心を払わなかった仏教・神道の青年会や講、新宗教の末端組織といった地域に根差した宗教集団の取り組みから地域活性化のヒントを示すことを目的としている。
内容は宗教的組織の活動事例の紹介が中心で、8人の研究者が各地の調査事例を基に論を展開する。紹介された事例は仏教青年会や御嶽講、立正佼成会、カトリック教会など多岐にわたり、一般的な結論を導くのは困難だが、概してどこも担い手不足に直面し、年々運営が厳しくなる現状がうかがえる。
ただ、地域の枠を超えて同じ課題を共有する人々を見つけ出すことで息を吹き返した御嶽講のような事例には一筋の光明を見いだす思いがする。
それを可能としたのがSNSによるつながりだ。SNSでつながった他講からの助っ人を得て催した火渡りには地域内の一般人も大勢集まったという。著者の一人は「各地に点在する信仰者たちを結びつけるホームはいつも開かれている。そこにアクセスすることで拡がる世界がいまはある」と訴える。
定価2970円、ナカニシヤ出版(電話075・723・0111)刊。