現代「神道」講座 寛容と共生のこころ…藤本頼生著
自然信仰や仏教と融合しながら日本人の宗教観、信仰心の土台をなしてきた神道の考え方を、建築や習俗、祭礼など様々な切り口から紹介する一般向け教養書。農耕や酒、菓子などの暮らしの文化、アニメやSDGsなどの新しいトピックまで、幅広いジャンルと神道の関わりを取り上げている。
著者は、神道とは古くからの日本の民俗信仰として多面的な価値を内包する「聖なる箱」だと指摘する。神道は日常生活の中にある宗教であり、その生活態度はすでに開けられている箱の中に秘められた共有の価値を見いだす営みであって、これらの意識や営みが一つの形となって現れるのが祭祀・祭礼だという。この祭りの場として神社が存在し、祭りは神社が鎮座する地域の人々にとって紐帯や日々の活力の源泉となる役割を果たす。
本書では著者のこうした考えを基に、自然環境や人々の暮らしと密接に結び付く「共生」の宗教である神道が、現代日本人の生活文化の中にどのように存在しているかを明らかにしている。
付録として、神道に関する基礎的な知識を「神道の開祖は?」「『ご神体』とは何?」といったQ&A方式で解説するほか、伊勢や八幡など主な神社信仰に関する説明も掲載している。
定価1980円、佼成出版社(電話03・5385・2323)刊。