元伊勢・倭姫命を訪ねて 伊勢神宮に天照大神を祀った皇女の物語…川村一代・櫻井治男著
天照大神を伊勢の地に祀ったとされる倭姫命を祀る倭姫宮が昨年、創建100年を迎え、記念に出版された。2人の著者のやさしい語り口で、倭姫命の旅を2千年の時を超えて再現する。
伊勢神宮は両正宮を含めて125社の神社からなり、正宮、別宮、摂社、末社、所管社の別があり、宮域を越えて三重県南部の各地に鎮座している。数々の神社のうち、正宮に準じて別格の地位を与えられたのが14社の別宮で、神風を起こしたという風日祈宮などがあるが、一番新しいのが市民の熱い請願で建てられた1923年鎮座の倭姫宮だ。
倭姫命は天照大神を祀るにふさわしい場所を求めて各地を巡訪した末、最後に伊勢の地に祀ったとされる。その事績は記紀に記されるが、中世に成立した『倭姫命世記』にはさらに詳しく書かれており、本書もそれに準じて各地を訪ねる。単に順番に伝承地を紹介していくわけではなく、各地の「名産品」をお供えしたことや『倭姫命世記』が説く祭祀の根本精神「元々本々」を現代にどう生かすのか、女性活躍の在り方なども考察する。
倭姫命が最初に天照大神を祀ったとされる奈良県宇陀市の阿紀神社の役員や、伊勢市民でつくる奉賛会副会長のインタビューも令和に生きる倭姫命の神話として興味深い。
定価1980円、晶文社(電話03・3518・4940)刊。