私を助けてくれた50の禅語 こころが調う ゆる禅語…田中ひろみ著
仏像に関する著作を手掛けるイラストレーターで文筆家の著者が、訪問先の寺院で感銘を受けた禅語をイラストと共に平易な言葉で解説する。『法華経』『臨済録』『東坡禅喜集』などの仏典や詩集から50個の禅語を選定し、悩みを抱えた人々へ生きるヒントを示す。
禅語の奥深さについて、著者の経験を交えながら語っているのが本書の特徴だ。「幸せはすでに手の中にある」を意味する「明珠在掌」の項目では、自身の乳がんの闘病経験を振り返る。乳がんの手術後に桜を見た時「今を生きられることがこんなに幸せなんだと、心から思った」と実感し「真に大切な宝物は、実はどこか遠くへ行って探すものではなく、自分の手のなかにありました」と「明珠在掌」の気付きを得たと述べる。
「一行三昧」「壺中日月長」の項目では写仏用の仏画を掲載。写仏を通じて一点に集中すること、夢中になれるものを見つけることを読者に勧める。「集中することで思考をリセットして、心と体をよい状態に保つことが必要」だと説く。
付録として坐禅の基本的な呼吸法や手の組み方、宗派ごとの違い、初心者でも坐禅体験ができる寺院なども紹介している。
定価1430円、京都芸術大学東北芸術工科大学出版局藝術学舎(電話03・5412・6102)刊。