スマナサーラ長老が道元禅師を読む…アルボムッレ・スマナサーラ著
スリランカ上座仏教(テーラワーダ仏教)長老の著者からすると、道元は「仏道をしっかり歩んでいるえらい先輩のお坊さん」として見えるのだそうだ。そこで、道元の教えに関心を寄せる読者のために「難解至極な道元禅師の言葉を、ブッダの教えに照らして明らかにし、日々の暮らしの支えになるよう」読み解いていくことを本書の狙いとして掲げている。
道元の主著『正法眼蔵』のうち、そのエッセンスともいえる「現成公案」の巻を中心に取り上げつつ、編集者との対話形式によって解釈を深めながら分かりやすく読者に伝えていく体裁を取っている。とりわけ「仏道をならふといふは、自己をならふなり」という現成公案の一節を、仏教そのものを要約した本質に当たるような言葉だとして高く評価する。この一節に込められた道元の意図について、時にパーリ経典におけるブッダの教えを参照しながら、本書全体を通じて明らかにしていく。
さらにはその実践についても、特別な場所で特別な修行をせずとも人生を禅そのものとして、日常の暮らしの中の物事を受け止め、それを行っている自分自身を真剣に観察することで自己を学ぶことができると著者は説いている。
定価1650円、佼成出版社(電話03・5385・2323)刊。