正念場の被災者支援 施設拠点型と宗教者アウトリーチ型
大阪大教授 稲場圭信氏
7月28日の令和8年熊本地震(M7・1、最大震度7)は宇城市、八代市、氷川町をはじめ熊本県内に大規模な停電や断水、住家被害をもたらした。発災から2カ月が経過した現在も、約1400人が避難生活を送っている。8月上旬には40・3度を記録する酷暑となり、生活インフラの寸断下で熱中症などの二次被害リスクが深刻化した。さらに、発災2カ月の段階でボランティアの減少やマンパワー不足が顕在化している。
ここで最も警戒すべきは災害関連死だ。2016年熊本地震では死亡者全体の約8割に当たる223人が避難生活等に起因する災害関連死であり、その多くは発災後3カ月以内に集中した。地震の直接的被害から命を取り留めた被災者を二次的リスクから守るため、発災2~3カ月に当たる現在の支援が重要な局面を迎えている。
甚大な大災害に対し、宗教者や宗教団体は初動段階から多角的な救援活動を展開した。私も6回にわたり現地で共働実践している。それは大きく「宗教施設拠点型」「宗教者アウトリーチ型」の2類型に整理できる。第1の拠点型支援では、宇城市の真宗大谷派光照寺や浄土真宗本願寺派延福寺、八代市の同派西福寺やカトリック八代ナザレ園・八代教会など寺院や教会が自ら被災しながらも施設を開放し、避難所、給水・充電・シャワー設置場所、炊き出しや復興支援の拠点として機能した。酷暑の中で車中泊や自宅避難を余儀なくされる人々に、身体的・精神的な休息空間を提供している。宗教施設が空間提供、資源集積、災害復旧・復興の拠点、コミュニティー形成の場として機能している。
第2のアウトリーチ型支援では光を届ける活動(岩崎哲秀神照寺住職ら)、シャンティ国際ボランティア会、れんげ国際ボランティア会、真如苑SeRV、天理教災害救援ひのきしん隊、金光教大阪災害救援隊、九州臨床宗教師会、日本笑顔プロジェクト、Akune mission広島ルーテル教会などの宗教者が在宅避難者宅、要配慮者施設、被災した宗教施設などを巡回し物資配送、技術支援、傾聴活動を行ってきた。機動性、専門性、伴走型のケアが特徴である。
宗教者の存在は被災者に安心感を与え、外部者だからこそ語れる傾聴の場は心の負担を軽減する。炊き出しやサロンの場で「ご近所で心配な方」を伺うことで、孤立した潜在的要支援者を発見するアウトリーチの重要な契機となっている。
今後求められるのは、支援の継続性と受援力の向上である。宗教施設は平常時から地域社会に根ざした結び目である。自治体や社会福祉協議会の職員自身も被災し対応力が制限される中、地域の宗教者が自ら支援を受け入れ機能させる受援力を発揮し、民間NPO、保健師・看護師、大学、行政、社会福祉協議会と垣根を越えて情報共有・連携を図ることが不可欠である。
被災地では2カ月が過ぎ「今が、一番つらい」という声がある。災害関連死を出さないこと。これからが正念場である。被災者に寄り添い続ける伴走型支援の継続を宗教者に期待したい。








