トイレ問題
能登半島地震の取材で2日間、金沢市から珠洲市までを往復した。車で片道4時間かかり、不安になったのはトイレ問題だ。珠洲市は断水が続き復旧は遅い地域で4月以降になると見込まれる。避難所でトイレを借りるのは心苦しく思い、人のいない海岸や山道でそそくさと済ませた◆珠洲市の避難所で支援活動する日本笑顔プロジェクトの林映寿代表(真言宗豊山派浄光寺副住職)は「食べる支援よりもまず『出す支援』」と強調する。トイレの水が流れず衛生的でなければ、安心して排泄をすることはできないし、飲食を我慢して体調を崩す人も出る。林代表が支援する避難所では、山から湧き水をくんできてトイレの水を流しているが、大きい方は凝固剤を使って袋に入れて捨てている◆支援者は被災者と同じトイレは使用しないことにしており、林代表は「支援者の後方支援も課題」と話す。ボランティアの受け入れが奥能登地域で進まないのは、道路事情の悪さのほかに、断水で思うようにトイレが使えないことも影響していると感じた◆当面の解決策の一つはバイオトイレの活用ではないか。電気さえあれば水は不要で、微生物の働きで排泄物を分解する。くみ取りが不要で東日本大震災でも活躍した◆被災された方が日常を取り戻すには時間がかかりそうだが、生きるために水は不可欠だ。一日も早い水道の復旧を心から願う。(須藤久貴)