女神のほほ笑み
米国の象徴の一つである「自由の女神」像は、ニューヨーク湾に浮かぶリバティ島に立つ。1876年の米国独立100年を記念し、フランスから贈られた。除幕式は86年にあり、当時の米国大統領、グロバー・クリーブランドらがお披露目を祝った◆クリーブランド大統領は、日本ではほとんど無名と言っていいだろう。だが、除幕式当時の大統領であったこと以外に、興味深い経歴がある。米国の歴代大統領の中でただ一人、「連続ではない2期」にわたり大統領を務めたのがこの人だ◆もっとも、この来歴には「今のところ」とのただし書きが必要かもしれない。今年11月の大統領選が迫る中、前大統領のトランプ氏が史上2人目の返り咲きを果たすのではとの観測が現実味を帯びつつある。共和党は同氏、民主党は現職のバイデン氏が党の候補者指名獲得を確実視されており、両氏の一騎打ちとなる公算が高い◆トランプ氏がホワイトハウスの主人であった4年間を一言で表すなら、「分断」という言葉が真っ先に浮かぶ。経済や外交、安全保障など様々な分野であつれきが生まれた。しかし、現政権下でこうした亀裂が解消されたとは言い難い◆バイデン氏の再選となるのか、トランプ氏が再選を果たすのか。米国だけでなく、世界の耳目が大統領選の行方に集まっている。果たして女神は、どちらにほほ笑むのだろう。(三輪万明)