はやるかカレー
新しい企画や事業を進めようとしてもなかなかうまくいくものではない。門外漢であれば特にそうで、経済と縁の遠い寺院が始める新事業となればなおさらだ◆先頃、京都府伊根町を平日に取材で訪れて驚いた。日本三景の天橋立は閑散としていたが、車で約30分の古い町並みが残る伊根の町は観光客でにぎわっていた。若狭湾の小さな漁港で過疎地だった伊根町は、町を挙げて観光をPRしてきたが、うまくいかなかった◆一転したのは台湾のインフルエンサーによる写真の投稿だった。それがきっかけで数年前から多くの観光客が来るようになったという。地元の古刹・曹洞宗海蔵寺も宿坊を始め、世界中から予約の電話が入るなど、年中フル活動している◆これは成功例だが、近年、新しい食文化をはやらせようとしているのが4月8日の花まつりだ。若い僧侶らを中心に、釈尊の故郷・インドのカレー、仏に引っ掛けた「ホトケーキ」、これらを花まつりに食べようとSNSで呼び掛けている◆今年は「(花まつりにカレーは)平成末期から続く伝統行事」との投稿があれば、両方を一緒に食べたという投稿も。甘茶かけは江戸時代に始まったとされるが、令和の時代には新しい食文化が必要かもしれない。SNSでの地道な宣伝が著名なインフルエンサーの目に留まり、今後、爆発的に流行する可能性だってあるだろう。(赤坂史人)